更新日2023/12/13
中古住宅を購入してリノベーションするスタイルは数年前から人気ですが、中古の一戸建て住宅を購入する際には、注意すべきポイントがたくさんあります。例えば、マンションならRCやSRCなど構造が決まっているのに対し、戸建は木造、鉄骨造、RC造など他にも種類が多くあり、木造でもさらに在来工法や2×4などに分けることができそれぞれに対応したリフォーム・リノベーションが必要となります。また、建築基準法の改正により、住宅の築年数によって補強すべきポイントが大きく異なってきています。こうした事情から、現在では「中古住宅では2000年以降に建てられた建物をメインで探し、最悪でも新耐震基準81-00住宅にしましょう」とアナウンスを行っている、不動産会社が大半を占めている現状があります。
ですが、本当にそうでしょうか。
リフォームのしやすさは、確かに1987年以降に建てられた建物の方が楽ですが、この辺りも含めて今回は解説していきたいと思います。
ここからは、東京で中古住宅を購入して性能向上リノベーションを行う意味についてお話したいと思います。
建売住宅に対する中古住宅のメリットは何か?
国土交通省の「2021年住宅市場動向調査」によると、戸建分譲住宅(建売)の平均価格は4250万円、中古戸建住宅の平均価格は2959万円と、約1300万円以上の差があることがわかります。リフォームに1300万円かけて建売住宅と同じ予算で購入しても、内装や設備を自分好みに選べるので、規格型の建売住宅よりも満足度が高いのではないでしょうか。また、自分好みに施工できる注文住宅の全国平均価格は5,112万円で、中古戸建住宅の価格と比較すると約2,000万円も高くなっています。
流通量の多さ
希望のエリアで新築物件を探すのは難しい場合もありますが、中古住宅であれば見つかる可能性が高いです。国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムレインズ不動産流通標準情報システム(品川区・杉並区)を検索してみると、今現在、中古住宅が340件、新築住宅が170件の登録情報があります。新築に比べて中古は倍の件数が取引市場には存在しています。
中古住宅を購入する際の注意点
見えない部分の構造体の状態が確認できない。
構造部分の状態は表面から見ることができず、スケルトン状態にすると補強工事などで予定外の費用が発生するケースもあります。検査費用はかかりますが、ホームインスペクター(住宅診断士)や一級建築士などの専門家に構造部の状態を確認してもらうことをおすすめします。
保証期間が短い
購入前に気づかなかった欠陥があった場合、買主は売主から補修や保証を受けることができます。新築住宅では、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について10年間の保証がありますが、中古住宅の保証期間は、売主が法人の場合は2年、個人の場合は数カ月と短いのが特徴です。特に個人の場合は保証が無いケース多く存在します。
中古住宅の中には、リノベーション住宅推進協議会が認定する「リノベR5」のように、構造部分を5年、それ以外の部分を2年保証するものもありますが、まだ登録されている数は多くはないようです。
もちろん、デメリットもあります。実は、中古住宅はすでに建築されているため、構造部分の状態が目視ではわからず、購入後、リフォームのためにスケルトン状態にすると、構造部分の傷みや劣化が激しいとはよくあるケースです。そのような事態を避けるためには、専門家にホームインスペクションを依頼することが一般的ですが、その場合、費用が発生します。中古物件の取引では、売主の目的は高く売ることですから、設備やクロスの張り替えなど、目に見える部分で本当に必要な耐震性能や断熱性能がおろそかになっているケースが少なくありません。そのような表面的なリフォームしかしていない場合でも、「リノベーション済み」と記載されている場合が存在しますので注意が必要なのです。
1のようなデメリットに対して有効な手段が性能向上リノベーションになります。また、性能向上リノベーションを行う場合には性能向上リノベーションを行おうとする建物の弱点を理解しておく必要があります。ですが、中古一戸建て住宅には、古いもの、新しいもの、大きい家小さい家もの、木造とRC造など、さまざまなタイプがあります。どのような中古住宅がリノベーションに向いているのでしょうか。
マンションに比べ、中古一戸建ては状態や家の特徴にバラつきがあるため、物件の見極めが非常に重要です。
2000年以降に申し込まれた住宅は、基本性能の工事にかかる費用が安くなる
リフォームを行い場合で、中古一戸建てを購入する際の目安としては、木造住宅の改正建築基準法(現行法)が施行された2000年6月以降に建築確認申請された住宅をおすすめします。それ以前の建築基準法の耐震基準で建てられた住宅は、耐震性が低いものが多いからです。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)の調査によると、1950年から2000年までに建てられた2階建て以下の在来木造住宅の9割以上が耐震性に問題があることが分かっています。
築20年の中古住宅が土地代だけで買える。
日本では、築20〜30年で取り壊され、不動産としての価値がゼロになることを前提に、中古の戸建て住宅が「古家付き土地」として販売されることが多くなります。購入費用が減れば、その分リフォーム費用に回すことができます。状態の良い住宅を見極めれば、耐震補強や劣化部分の補修など、適切なメンテナンスで長く住み続けることができます。更に生活性能を向上させるリノベーションを行えば、新築住宅と同等もしくはそれ以上の快適な環境を手に入れることができます。
古い家でも、大手ハウスメーカーなど強い構造にこだわる会社なら、耐震性能も期待できます。
例えば、大手ハウスメーカーの中には、強固な構造の家を建てているところもあり、現在の建築基準法改正(2000年)以前に建てられた家でも、耐震基準をクリアしているケースが多くあります。そのような住宅は、耐震改修の費用を抑えることができます。正確にお伝えすると信頼するしかありません。大手ハウスメーカーの建物は型式適合認定という許可を受けて建築されていることから建てたハウスメーカーしか耐震補強工事を行う事はできません。詳しくは型式適合認定をご存じでしょうか。|お役立ちコラム|東京中古一戸建てナビ (chukokodate.com)をお読み下さい。
ですが、三井ホームなどが採用している2×4(ツーバイフォー)工法、積水ハウスが採用している軽量鉄骨造、旭化成ホームズが採用している重量鉄骨造は、もともと構造が堅牢で耐震性が高いのが特徴です。
耐震性については一定の性能を有していますが、断熱性能はその限りではありません。このような建物には、サッシの補強を中心とした断熱補強中心の性能向上リノベーションをお勧めします。耐震補強を行わない分コストもかかりません。
木造軸組工法は性能向上リノベーション向き
木造軸組工法で建てられた中古戸建住宅は、間取り変更などリフォームの自由度が高いのが特徴です。
間取りを変更するリフォームの場合、変更しやすい工法とそうでない工法があることに注意が必要です。例えば、戸建て住宅で最も多く採用されている「木造軸組工法」は、壁を取り外すことで間取りを変更しやすい工法です。
同じ木造でも「2×4工法」は壁で建物を支えるため、撤去できない壁が多く、間取り変更に制限があります。RC(鉄筋コンクリート)造には「ラーメン構造」と「壁式構造」があるが、ラーメン構造は変更が可能です。
プレハブ工法は、素材によって木造、鉄骨造、コンクリート造に分けられます。特に箱型のユニットを現場に運んで積み上げるプレハブ工法の場合、間取りの変更はほぼ不可能です。
鉄骨造には「重量鉄骨」と「軽量鉄骨」があり、どちらも柱と梁の構造ですが、軽量鉄骨は耐力壁(建物を支える壁)の移動に制約が発生してしまいます。
詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
古いハウスメーカーの鉄骨造住宅は買ってもいい? 購入後の訪れるリノベーションの課題とその対策|お役立ちコラム|東京中古一戸建てナビ (chukokodate.com)
以下のようなタイプの土地の中古住宅については、基本的に住宅ローンの融資が受けられなかったり、融資限度額が低く設定されたりするので、購入費用やリフォーム費用に住宅ローンを利用しようと考えている人は注意が必要です。ただし、これらの制限がある土地は販売価格が比較的安い傾向にあるため、コスト面では魅力的な土地といえます。
再建築不可物件
通常、建築基準法では、建物を建てるための土地は、幅4m以上の道路から2m以上離れていなければならないことになっています。これを「再建築不可」といいます。
しかし、万が一火災で焼失してしまった場合、新しい家を建てることができなくなる恐れがあります。万が一そのような事態になった場合、土地を買い足して接道条件を変更し、建て直しをすることは可能ですが、うまく家の隣の土地を購入することは難易度は高いです。
このような再建築不可物件は住宅ローンを組むのが非常に難しい物件となります。ローンを組める場合でも必ずと言っていいほど自己資金が必要になります。また、リフォームローンを利用したり、再建築不可物件の安さを利用した投資方法も検討されていましたが、再建築不可の大規模なリフォームは2025年の建築基準法の改正で行えなくなってしまう可能性が高いので注意しましょう。
「セットバックが必要」な物件
敷地に接する道路の幅が4m未満の場合、道路幅を4m以上確保するために建物を建てられる範囲を制限するのが「セットバック」です。また、将来的に道路幅を片側2mに拡張することが決まれば、建物の一部を取り壊して「減築」しなければならなくなります。道路を作り直す場合は、必要なセットバックを避ければ、新しい建物を建てることができます。このような物件で住宅ローンを利用する際には注意が必要です。基本的にはかなり古い物件か違反建築物になります。違反建築の物件は住宅ローンを利用することが困難となりますので、状況を見極めないとなりません。
「建ぺい率」「容積率」を超える物件
「建ぺい率」「容積率」をオーバーしている古い戸建住宅は、住宅ローンが利用できない場合が多くなります。100m2の土地で建ぺい率が70%であれば、床面積70m2の建物が建てられます。100m2の土地に対して容積率が150%であれば、延べ床面積150m2の建物を建てることができます。
これらをオーバーしている場合は違反物件や既存不適格としてローンを使用する事が難しくなります。
これらの物件で住宅ローンを利用する場合は要注意です。ご興味がある方は下記でまとめていますのでこちらをご覧ください。
中古住宅の購入時のポイント
ここまで紹介した物件を購入する際にポイントとなるのが、検査済証や確認済証です。
これらの書類は簡単に言うとまず確認済証ですが、日本の法律では勝手に家を建てることはできず、特定行政庁、建築主事の許可をもらって建てなけばなりません。この行為を建築確認申請というのですが、「こんな家を建ててもいいですが?」、「いいですよ」というのが確認申請になります。つまり、確認済証があるということは合法な建物で建てる計画をしているという事が分かるのです。ですが、実際に建ったかどうかはわかりませんよね。そこで、その設計計画に基づいて「この家が建ちましたが、大丈夫でしょうか?」「大丈夫です」というのが検査済証になります。つまり、検査済証がある事によって建築基準法やその他関係法令に基づいて正しく建てられた家だという事になります。そこで中古住宅を購入する際にまず確認したい書類が検査済証や確認済証になるのです。その他、必要が書類は何があるのでしょうか。
中古住宅探しのポイントの一つに書類の有無があります。下記の書類は必ずあるわけではなく、古い物件であればあるほど書類はないケースの方が
売主後保管していたらあるはずの書類
・設計図書(詳細図面)仕様書など
設計図書がある場合はリフォームの計画がスムーズに進みます。
・販売当初のパンフレットなど
パンフレットにはその街区のコンセプト等記載してあります。
・購入時の契約書と重要事項説明書
購入時の契約書と重要事項説明書も時に重要な場合があります。例えば、物件が建った経緯などが記載してある場合などがあります。
建築主事の検査を受けていたらあるはずの書類
・確認済証・検査済証・台帳記載事項証明書
コチラのコラムをご覧ください。
確認済証が無い時の対処法|お役立ちコラム|東京中古一戸建てナビ (chukokodate.com)
検査済証がない!? 対処法は?|お役立ちコラム|東京中古一戸建てナビ (chukokodate.com)
台帳記載事項証明書とは 取得方法は?|お役立ちコラム|東京中古一戸建てナビ (chukokodate.com)
法務局で入手できるはずの書類
・登記簿謄本(土地・建物)・地積測量図・公図・建物図面
基本的にはある事が多い書類になります。法務局に行けば取得できます。地積測量図は土地区画整理で換地処分が行われた土地は地積測量図がありません。このような理由があればよいのですが、なくて売買されるケースもありますので、ご注意下さい、東京のように土地の価格が高いエリアは隣地との境界も揉める事が多くあります。例えば謄本がない、また、地積測量図が古い場合などはトラブルのリスクが高くなります。
これらの書類があった方がよいのですが、中古の場合は何かしらの理由で存在しない可能性があります。
このような書類が無い場合でも現地に足を運べば、魅力的な中古住宅の可能性も十分になります。
旗竿地や変形地、擁壁の上に建つ家などは比較的不人気なため、販売価格も低くなりがちです。しかし、地図や間取り図などの資料を見ただけでは、実際の良し悪しが判断できない中古住宅も多くあります。「現地に足を運んでみると、眺望が良かったり、逆に買いたくないと思ってしまう物件だったりします。
不動産業界もオンライン化の波がやってきていますが、ある分の資料の確認と現地調査は購入前には必ず行いましょう。
ここまで解説してきましたが、リノベーションに適した物件の条件を知っていても、実際の中古住宅の状態は様々です。いざ探すとなると、やはりハードルが高い。住みたい街で中古住宅を多く扱っている不動産会社に物件探しを依頼したり、東京中古一戸建てナビのように、物件選びから工事完了までワンストップでサポートしてくれるリノベーション会社に依頼するのが良いでしょう(ただし、こうしたワンストップサポートを行っている会社は少ないです)。
そして、購入したい中古一戸建てが決まったら、購入申し込み後の契約前に、一級建築士やホームインスペクターなどの専門家に、耐震性や劣化状況など、建物の状態を検査してもらいましょう。
売主が行うホームインスペクションがある物件もありますが、そうでない物件については、買主がきちんと確認する必要があります。古い家は図面がないことが多く、基礎が補強されているか、雨漏りはないか、シロアリの被害はないかなど、現場を見ないと構造がどうなっているのか判断できません。
性能向上リノベーションを行う事でこのような中古戸建ての購入時のデメリットをすべて回避することが可能になります。古い家でも適切に改修すれば、長く住める快適な住空間になります。自分の自分たちの住みたいエリアで魅力的な住宅を見つけてください。または性能向上リノベーションを行い魅力的な住宅にしましょう。
さいごに合言葉を旧耐震基準は基礎補強、81-00(ハチイチゼロゼロ)住宅(新耐震基準)は金物補強と壁バランス、2000年基準は断熱補強、
そして、全ての年代に共通で、耐震補強と断熱補強です。
それぞれの年数や建物に合わせた性能向上リノベーションを行いましょう。
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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