更新日2024/2/9
耐震等級3を取得するためには構造計算が必要ですが、そもそもなぜ構造計算が必要なのか理解されていますか?
なぜ構造計算が必要か、簡単に言うと、木造2階建てや平屋建ての建物の多くは、基準法上4号建築物に分類されるからです。
実は、4号建築物に分類される2階建てまでの建築物については、構造計算(許容応力度計算)を行うことは法律上、義務付けられていません。
これは、構造計算(許容応力度計算)をしなくてよいということではなく、単に、2階建ての木造建築物について構造計算(許容応力度計算)をしなければならないと法律で定められているわけではないという事を理解しなければなりません。
ですが、木造2階建ては構造計算をする必要がないというのが建設業界の常識になってしまっているのです。
しかし、本当に不要なのでしょうか?考えてみましょう。
構造計算とは建築構造物・土木構造物などが、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重などに対して、構造物がどのように変形し、構造物にどのような応力が発生するのかを計算することです。
水平(方向)荷重とは、主に横方向から建物に作用する荷重で、次の2種類があります。
(1)地震力(地震時に受ける力)
(2)風力(風によって受ける力)
鉛直(方向)荷重とは、地球の重力によって作用する荷重であり、以下の3種類から構成される。1.
(3) 固定荷重(建物自体の重さ、自重ともいう。)
(4) 荷重(人、家具などの重さ)
(5) 積雪荷重(屋根に積もった雪の重さなど)
建物は建ててから数十年、住んでいる間にさまざまな荷重を受ける。
これらを考慮した上で構造計算を行います。
木造2階建ての場合、法律で義務付けられていないとはいえ、その必要性を無視することには疑問が残ります。
法律では、木造2階建ての場合、構造計算(許容応力度計算)を行わないと建てられないというわけではありません。
そうしなくても建てることはできます。
しかし、それでは安全であるという根拠がないのです。
建物を建てて、安全にそして快適に暮らそうと思ったら、構造計算をしないで、どうやって安全性や快適性を検証するのでしょうか。
そうです。構造計算がなければ、確認ができないのです。
構造計算を行わない業者は多分、今まで建てた建物と比較して、「このくらいでいいだろう今まで建てた家は倒れてないし」と言うのでしょう。
今まで建てた建物と比較して、「これくらいなら大丈夫だろう」ということで、いろいろと判断して決めているだけではないでしょうか。
特にリフォームではその必要性が増します。2000年以前に建てられた多くの家が強度不足という現実があります。
ですが、耐震等級1すら確保されているのかわからない、このような現状が実在します。
木造2階建ての建物は耐震の計算がされていない。つまり、"本当に震度7まで耐えられるのか?" 実際には、熊本地震のような震度の低い地震の繰り返しに耐えられるかどうかは、構造計算をしてみないとわからないのです。
ところが、みんな「大丈夫だ」「安全だ」と言います。中古住宅の場合になるとそれにもみたない、新耐震基準で十分ですなんていう業者も存在するのです。その根拠は何なのか。根拠はないのが実情です。
理由を尋ねてみてください、 「今まで安全だったから」「構造計算は今までやったことがないから」「みんなそう言っているから」「今までそうしてきて問題ないから」というだけなのです。本当の意味での安心は阪神大震災はもちろんですが、熊本地震や能登地震が起こっても安心に暮らす事の出来る住宅です。
例えば、梁のサイズをどうやって決めたのでしょうか?普段から人が梁に乗り、もしかしたら重いものを運ぶかもしれない部屋で、どうやって梁を決めるのですしょうか?構造計算をしないと梁の寸法を決められないですよね?
でも、現在は、どこの誰かが勝手に決めている寸法で張りが出来上がっています。「これくらいでいいや」といって梁ができてしまっている。構造計算をしないということは、こういう事なのです。
基礎も同様です。基礎の寸法はどのように決めるのでしょうか。基礎は建物を支える重要なコンクリートの部分であり、鉄筋なども入っています。その鉄筋の大きさや量、ピッチはどうやって決めるのでしょうか?これは構造計算をしないと決められません。しかし、一定の決まりはあれど、鉄筋の大きさや量は、各社が独自に決めています。
また、構造計算をしないのであれば、何が、どこが、どのように安全なのかもわかりません。「建物は安全です」アピールしているビルダーがいます。しかし、このビルダーは構造計算をしてはいません。そんなビルダーでも"安全ではない家かもしれない "と言うことはありません。「地震で倒れるかもしれない」とか、「床の梁がランダムに選ばれている」「熊本地震と同じような地震が起こったら10%ぐらいは倒壊しますよ」とは言いません。ですが、もしかしたら床の梁がランダムに選ばれているから壊れるかもしれないし、床が傾くかもしれません。構造計算を行わない会社でもそんなことを考えて家を建てたり売ったりしている人はきっといないとは思います。
構造計算を理解していない、あるいは必要性を感じていない人は、地震で家が壊れるかもしれない、揺れが大きいかもしれない、床の梁がたわむかもしれないという心配すらしていないのです。構造計算をしなくても、「いい家ができる・安全です」という自信は言っているだけ、ただのはったりこれが現実です。特に設計者もそうですが、営業が別にいる場合は注意が必要です。「構造計算なんて費用の無駄」なんてことを言ってしまう営業マンも多く存在します。こういった業者の構造計算に対する答えは、大抵同じです。施工業者はこれまでの経験から、「今まで地震で被害がなかったから大丈夫」と言います。また、「どの程度の耐震性に耐えられるか?」という質問には、「建物はどの程度の耐震性を持っているのか?わからないけど、大きな地震でも、震度7でも大丈夫だろう。」という回答が返ってきます。根拠はないが、壊れないという圧倒的な自信があるのです。施主の立場からすればここまで自信満々なら大丈夫だと信頼してしまうでしょう。
これもよく言われることです。「構造計算をすると、梁が大きくなりすぎる」とか、「構造計算をすると、梁や基礎が大きくなる。構造計算をすると、梁や基礎のコストが上がるよ」こんなことを言われたら、要注意です。お気づきでしょうか?自分たちが言っていることが矛盾しているのです。
構造計算をしなくても「安全な家」は建てられます。この梁は安全な梁、床梁の大きさです。うちの基礎は計算しないけど、安全な鉄筋量の基礎です。というのは大前提として構造計算をすれば、梁の大きさは大きくなる。構造計算をすれば、基礎の鉄筋が増え、お金がかかる。つまり、これは構造計算をするとボリュームが増えるということは、自分たちが勝手に安全と判断している梁の大きさや基礎の鉄筋の量では足りないということです。つまり、現在提案している家では梁の大きさや基礎の鉄筋量では足りないと自分たちで言っていることになります。
このおかしさに気づいていないところが、とても不思議なところです。耐震性が十分でないのに、地震が来ても壊れないと言っているのと全く同じです。本当に大丈夫な家が計算をしっかりすると、地震に弱い家になってしまうなんてことはありませんよね。元々、足りれいないということなのです。もしくは、地震が起こっても倒壊しないレベルの家でなるべく安く購入したいと思われる方もおられると思います。ですので、現在の建築基準法はその最低レベルで定められています。構造計算で壁の量が増えるということは、今の壁が足りないということですから、耐震性がないにもかかわらず耐震性があるというのはおかしいのです。
実際に、一般の住宅メーカーで、この「増改築.com®」を読んで、構造計算が必要だと思い、業者に話を聞いたことがあります。ビルダーのところに行くと、「中古住宅は普通構造計算をしないが、私の家は安全だから大丈夫」と言われました。しかし、「構造計算をしてほしい」と伝えると、「十分安全だから、構造計算は必要ない。十分安全ですが、構造計算をすると梁の強度を上げる必要がありコストが上がります」「構造計算をすると基礎の鉄筋が増やさないといけないので、お金がかかります」と言われたとのことです。これはおかしな話ですよね。安全な家を建てるのであれば、構造計算をしようがしまいが、同じ梁断面、同じ基礎断面になるはずです。
安全だけど、大きくなる、お金がかかると言っているのでしょう。構造計算をして、構造が変わるということです。今建てようとしている家は、ボリュームが少なすぎる、梁が少ない、鉄筋が足りない、もしかしたら壁もない、だから安全じゃない。と言っている事と同じです。
他のメーカー、「しょうがない、じゃあ、お客さんから頼まれたら建てます。」「お客さんから頼まれたら、構造計算をしますよ。」
これもおかしい話です。頼まれれば、構造計算をして安全な家を建てる。頼まれなければ、あるいは言われなければ、自分たちが勝手に安全だと思う家を建てる。これは非常に危険な考え方です。お客さまにそこまで期待するのか、お客さまがそこまで調べてから工事を頼まなければならないのか、ということです。
構造計算のことを知らない人はたくさんいるはずです。できれば聞かれたくないと思っている建築業者もいるはずです。
新築住宅でも中古住宅でも「構造計算はやっているのですか?」という問いに
「施主から依頼があれば、構造計算をします。」「別途お金をいただければやります。」だと建物の安全性はすべて施主に委ねられてしまう形になってしまいます。
「言われなければやらない。」実はとても危険な考え方なのです。
耐震性能や省エネ性能はオプションではない、と何度もお伝えしていますが、そういうものはオプションではないのです。
お客さんがそう言ったらオプションで決めるものではなく、標準装備が必要です。
例えば、構造計算をするかしないかのオプションがあって、お客さんが「する、しない」という選択肢があります。(オプションではあるというだけで、本当はおかしいですが)そのオプションすら示さず、話を進めてしまうケースも存在します。場合によっては、「構造計算をしていないけれども、どうしますか」という選択肢すら示されません。
構造計算をせずに家を建ててしまい、後から構造計算をしていないことがわかった
施主「うちの家の性能はどうなんですか?」
業者「"構造計算をしろ "と言われなかったからやっていない」
こんな話は実際にあります。
家を建てた後、耐震等級があることを知った施主が心配になり、工務店に自分の家の耐震等級を確認したそうです。すると、「耐震等級1しかない」と言われたそうです。
構造計算もしていません。「耐震等級3にしろとは言ってないでしょ。」あとで「構造計算をしろとは言わなかったじゃないか」と言われてしまいました。建築基準法に適合していないわけではありませんが、残念な話です。
こういう話を聞くと、「最低限、プロなら最初に確認をしろ」と思ってしまいます。せめて、プロなら説明をする必要があります。
本来は百歩譲って、構造計算は標準です。
耐震等級3を標準にして欲しいですが、耐震等級3をオプションに設定されるべきです。でも、せめて熊本地震の事例を説明して「どうしたいか」くらいは聞いてほしいと思います。
それを聞かずに勝手に家を建てて、後でお客さんから耐震等級については教えてくれなかったと言われてしまったら、「お客さんが言ってくれなかったから」と言って、逃げるよりも、選択肢を伝えて本当に安心な住宅の提供をするべきです。やってはいけないということはありません。いえやらないことは同じ商売をするプロとして、プロ失格です。
ここまで読んでいただいた方は、このようなことが起こりうることを既にご理解いただいていると思いますので、業者選びは慎重にお願いします。
このサイトでは、いろいろな情報を提供しています。
プロでもないのに、なぜ工務店の勉強が必要なのでしょうか?良い家、悪い家を理解するためだけでなく、悪い工務店、不動産屋を見分けられるようになるため、良い不動産屋、工務店を探せるようになるため、そのための知識を身につけるためだと思います。良い家と悪い家の違いを見極めるのはとても難しいので、頼れるビルダーを見つけることが大切です。
どれが答えかわからないという方は、ぜひご相談ください。
どれが答えかわからない場合は、ご相談ください。
「ちょっと違和感があるのだけど、何だろう。」
「悩みがあるのですが、どれが正解なのでしょうか?」
といった質問があれば、そこでお答えします。
構造計算は必要です。
構造計算が必要でないと考える理由の多くは、「大丈夫だろう」という思い込みです。
なぜ大丈夫だと思うかというと、過去の経験や慣習があるからです。過去に大丈夫だったから大丈夫と思っている。構造計算のことを何も知らない。構造計算をあまり知らない人は、構造計算の怖さを知らない。
一番怖いのは、「大丈夫だろう」という思い込みです。
今回の話に似た話を聞いたら、要注意です。
そして、面倒だからと構造計算をやりたがらないビルダーもいます。
やらないように一生懸命説得してきます。
「構造計算をしたい」と言えば、「うちの家づくりは安全だ」と言いながら、「費用がかかるからやらないほうがいい」と一生懸命に誘導してきます。
そういう答えが返ってきたら、もうやめましょう。
そんな人を説得する必要はありませんし、そんな人に家を建てさせるのは大変危険です。
新築住宅だけでなく、リフォームやリノベーションでも構造計算が標準となり、耐震等級3を標準としましょう。
そして、本当に安全な家を建てられることが当たり前になっている、そのような業者を選ぶのが一番です。
ですから、構造計算が不要であることを当然とするような家づくりをする業者には、十分な注意と見極めをお願いします。
最後に、今回は構造計算、耐震等級についてのコラムになりますが、断熱に関しても同様です。新築住宅の場合は2025年より断熱基準の適合が義務化となります。これは、世界レベルでの政治が絡んでいますので、標準レベルが割と高めに設定してあります。このようなご時世に断熱性のが伴ってない家の場合は即時に検討をやめた方がよいです。また、リフォームに関しても外皮計算を行うことが耐震性能の構造計算と同じ意味を持ちます。リフォームをお考えの方は、断熱、耐震の性能向上リノベーションも忘れてはなりません。
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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