2023.01.11
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契約不適合責任とは?責任内容と契約書での注意点を解説

更新日2024/1/16

はじめに ~契約不適合責任~

改正民法562条の条文. 第562条 引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは, 買主は ,売主に対し,目的物の修補 ,代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。

 売買契約では、商品の品質に欠陥がある場合、品物を間違えた場合、数量が不足した場合に、売主は買主に対して責任を負う。同様に請負契約では、請け負った仕事内容に不備があった場合、請負人は発注者に対して契約不適合責任を負います。

 2020年4月の民法改正(債権法改正)により、従来あった「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更されました。

こちらについては、契約不適合責任とは?その①https://www.chukokodate.com/column/detail/?p=20をを読みください。

 今回は、民法改正後の契約不適合責任の内容や、売買契約や下請け契約に関する契約書の留意点などを解説します。

 2020年4月の民法改正からしばらく経ち、業者もその変化に慣れてきましたが、未だに契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いを理解していない不動産業者がいます。長く個人で事業を営んできたベテランの不動産業者は注意が必要です。正しく理解していないと、思わぬ損害や損失を被る危険性があります。但し、そうなってしまったら、不動産業者の責任ですけどね。

1契約不適合責任とは? 

 契約不適合責任の定義については、冒頭で紹介したとおりです。以下では、その名称の由来、実際に問題となる場面、責任の内容などについて説明したいと思います。

契約不適合責任とは?その①でも解説させて頂きましたのでお読みいただいた方は次にお進みください。

(1) 名称の由来は?

改正民法の条文上、「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に発生する責任であることから、「契約不適合責任」と呼ばれています。

民法改正前は、瑕疵担保責任と呼ばれていた。

「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないとき」の具体的な内容は以下のとおりです。

〇種類に関する契約不適合

=購入した商品と異なる種類の商品が誤って引き渡された場合。

〇品質に関する契約不適合
=商品が契約で定められた品質基準を満たしていない場合。

〇数量についての不適合
=納品された数量が購入された数量に対して十分でなかった場合。

(2) 契約不適合責任が問題となる場面

以下のような場合、契約不適合責任が問題となることがある。

売買された土地や建物に不具合がある場合
工事請負契約の内容に不備がある場合

などがあります。

2民法改正後の契約不適合責任の内容について

ここでは、不動産などの「売買契約」とリフォーム工事や新築工事などの「請負契約」について、契約不適合責任の内容を説明します。こちらもその①でも解説しております。

(1) 売買契約に関する契約不適合責任

購入した商品や不動産に不具合があった場合、買主は売主に対して、契約不適合責任として、以下の4つの請求を行うことができます。

改正民法に基づく請求の内容
追加請求 
引き渡した商品の修理の請求(修補請求)、または不具合がない商品の引渡しの請求(代替品の引渡請求)

損害賠償請求      
損害が発生した場合は損害賠償請求が可能

 

代金減額請求    
購入代金の減額の請求
※代金減額請求ができるのは原則として追完を請求したが売主が応じない場合に限られます。

契約の解除    
契約を解除し、売買代金の返還を請求することができます。
原則として、売主が追加完成請求に応じない場合に限り、契約を解除することができます。商品は返却が必要です。
これも注意すべき点ですが、原則としては、契約した住宅を契約した状態(性能)で引き渡しを受けることが優先されます。

 

(2) 請負契約に関する契約不適合に対する責任

工事の結果、欠陥が発見された場合、発注者は請負人に対して、契約不適合責任として、次の4つの請求を行うことができます。

改正民法に基づき請求できる内容

追完請求             

不具合部分の修理の請求

 

損害賠償請求      

損害が発生した場合は損害賠償請求が可能

 

代金減額請求      

請負代金の減額の請求が可能

※代金減額請求ができるのは、原則として修理を請求したが請負人が応じない場合に限られます。

 

契約解除             

契約を解除して代金の返還を請求することが可能

※契約解除ができるのは、原則として修理を請求したが請負人が応じない場合に限られます。

 

3契約不適合責任と時効

民法では、契約不履行責任の行使期限を定めています。

この行使期限は、厳密には時効ではなく、除斥期間と呼ばれるものです。

具体的には、以下の通りです。

(1) 売買契約に関する契約不適合責任の時効

買主は、「瑕疵を知った時から1年以内」に売主に通知する必要がある(改正民法第566条)。

ただし、会社間の売買等には商法526条2項が適用され、売主は商品の引渡し後6ヶ月以内に買主に瑕疵を通知することが必要です。

なお、上記の民法、商法の規定は、あくまで契約書に行使期間の記載がない場合の規定であり、契約書において行使期間を短くしたり長くしたりすることは可能です。

 

(2) 契約に関する不適合に対する責任の時効

請負人は、「瑕疵を知った時から1年以内」に発注者に通知することが必要です。(改正民法第637条1項)。

ただし、この民法の規定は、契約書に権利行使の期限が記載されていない場合の規定も定めており、契約書において権利行使の期限を短くしたり長くしたりすることも可能です。

 

4契約不適合責任と免責について

契約不適合責任に関する改正民法の規定の詳細は上記のとおりですが、これらの規定はすべて「任意規定」であることに留意する必要があります。

任意規定とは、契約書に記載がない事項については法律の規定を適用し、契約書に記載がある事項については契約の内容が法律に優先するという性質の規定である。

したがって、民法改正後も、契約書に契約不適合責任の免除を定めたり、民法の規定より短い期間を定めたりすることは可能です。

ただし、契約不適合責任の免除や期間の短縮が民法以外の法律で禁止されている場合は、その法律の規定に従う必要があります。

 

(1) 民法以外の法律で、契約不適合に対する責任の免除・制限を禁止している例

BtoC(企業と一般消費者)取引の分野では、消費者契約法第8条第1項において、事業者と消費者との間の契約に関する事業者の契約不適合に関する一切の責任を免除する条項が無効であることが規定されています。

不動産取引の分野では、宅地建物取引業法第40条において、宅地建物取引業者が売主である宅地建物の売買について、宅地建物取引業者の契約不適合責任を免責する条項が無効であることが規定されています。

 

5契約書上の留意点

契約書でのポイント

契約書の雛形はどのような内容が必要になるのでしょうか。

以下、契約書上の留意点を説明します。

(1) 「買主が知っていた瑕疵」については売主が責任を負うことに注意
民法改正前は、買主が購入時に知っていた瑕疵については、売主は責任を負いませんでした。

つまり、改正前の民法第570条では、売主は「隠れた瑕疵」に対して責任を負い、買主が知っている瑕疵は「隠れた瑕疵」とはみなされなかったのです。

しかし、民法改正後は、買主が知っていた瑕疵も「契約不適合責任」の対象となりうるという内容に変更されました。

したがって、特に中古品や不動産の売買において、買主が一定の瑕疵を認識している場合には、売主が明示することが必要です

 (2) 買主側の場合、「買主指定以外の方法による追完を認める規定」に留意する。
「売主は買主に不相当な負担にならない範囲で、買主が請求した方法と異なる方法による追完をすることができる」(改正民法第562条第1項但書)

「追完」とは、商品または工事に不備があった場合にそれをなおしたり、不備のない商品と交換することをいいます。

上記の規定は、売主が買主の指定した方法によらない場合でも、買主は売主に瑕疵のある商品の修理や交換を認めなければならないことを意味し、買主にとって不利な規定であるといえます。

したがって、民法改正後は、自分が買主側または発注者側として契約を行う場合には、「民法第562条第1項但書」の適用がないことを契約書に明記する必要があります。

 

契約不適合責任を追及する側とされる側で視点が異なりますが、消費者契約法等の強行規定に違反しないか、予測可能性が確保しておくことが重要です。

売主側のチェックポイント

売主としては、消費者契約法や宅地建物取引業法で保護される契約でない限り、契約不適合責任に対する売主の責任を免除する契約を締結することが有利となります。ただし、売主が免責にしようとすると、代金の額に影響することもあり、最終的に買主が免責特約の付記を拒否することも考えられます。

その場合、契約内容に不適合責任を盛り込む必要があるが、想定外の形で不適合責任を問われることを防ぐため、追完するか、代金減額をするのか、損害賠償のいずれかを売主が指定できるようにし、追完の方法を売主が指定できるようにすることが重要です。

 

買主側のチェックポイント

買主としては、契約不適合責任が重い方が有利ですが、あまり重いと最終的に売買代金の額に影響し、売主が最終的に契約に応じない可能性が出てきてしまします。また、契約不適合責任における救済措置は、各当事者の状況に合ったものであることが重要です。

例えば、あなたが買った新築の窓がFIX窓のはずが開き戸になっていたとします。契約不適合責任に該当しますが、工事をされるよりもその分お金をもらえる方が良いと考える場合もあると思います。

また、民法では、契約不適合責任は、追完請求権、代金減額請求権、損害賠償請求権、法定解除権などの選択肢が用意されています。契約においてどのような選択肢がどちらの側にあると良いのかという観点も重要です。

また、追完の方法も契約によって異なる場合があります。複数の追完方法が考えられる場合、当事者の予測可能性の観点から、どの方法を指定できるかを意識しておくと、いざというときに対応できます。

契約不適合の責任期限については、民法上、種類・品質に関する契約不適合なのか、数量に関する契約不適合なのかが重要な区分となっています。契約ごとに、何が種類の問題なのか、品質の問題なのか、あるいは数量の問題なのか、具体的に想定し、契約書に盛り込んでおくことがトラブルを回避する手段の一つとなります。

6契約不適合責任の免責特約とは?

ここまでの説明で不適合責任の場合は、売主の責任がかなり重いことがおわかりいただけたと思います。

では、この契約不適合責任について、売主は免責されることができるのでしょうか。

それを行うのが「免責特約」と呼ばれるものです。

契約不適合の場合の「免責特約」とは、双方の合意により売主の責任を免除する特約のことである。

免責特約がある場合、買主は基本的に売主に対して不適合に対する権利を行使することができなくなります。

民法の規定によると

第五百七十二条 売主は、第五百六十二条第一項本文又は第五百六十五条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

 

つまり、契約不適合責任についても、基本的に免責特約は有効です。

なぜなら、契約不適合責任は任意規定であるからです。契約不適合責任を適用するかどうかは、当事者の意思によって自由に選択することができる。

ただし、免責特約が無効となる場合があります。

例えば、売主が何らかの契約不適合を知っていながら買主に知らせなかった場合、免責特約は無効となります。

売主が売買契約締結時に、建物が雨漏りしていることを知っていたとします。しかし、建物が雨漏りしているという事実を買主に知らせなかった。この場合、売主が契約不適合責任の免責特約を締結していたとしても、その特約は無効となるのです。

7契約不適合責任に関する留意点

ここまで、契約不適合責任に関する制度の概要を説明してきました。
さて、実際に買主が契約不適合責任を行使するために、売主が責任を問われないようにするためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。


買主が契約不適合の責任追及権を行使するために
ここでは、買主が権利を行使するために、どのような点に注意すればよいかを説明します。

買主が注意すべき点は、主に以下の3点です。

責任を追及できる期間

1つ目は、「責任を追及できる期間」です。
先ほど、買主の権利行使には期限があることを説明しました。
買主が契約書を見たときに、権利行使期間が民法に規定されている1年より短いかどうかを確認することが大切です。

 

権利行使期間内の通知

2つめは「権利の行使の通知」です。

買主は、契約書の不適合を知ったときから1年以内に売主に通知することが求められていました。

したがって、権利行使期間を超えないように、契約不適合を認識したらすぐに売主に通知した方がよいでしょう。

また、通知した場合でも、権利には時効があります。

したがって、できるだけ早く権利を行使することが重要です。
 

追加完成請求権の選択権

最後のポイントは、買主が「追加完成請求権を選択する権利を有するか」どうかです。
追完請求権は、契約不適合があった場合に買主が行使できる権利の一つでした。
ただし、「売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。」ということでした。
したがって、買主側に追完を選択する権利があるかどうかを契約書で確認することも重要です。

 

契約不履行で売主が責任を問われないために
次に、契約不適合責任を回避するために、売主が注意すべき点について説明します。

売主が注意すべき点は、主に以下の3つです。

 

契約書に免責特約の記載をする

1つ目は、契約書に免責条項を入れることです。特に売買の対象が中古の場合、経年劣化により売主が気づかない契約不適合が発生することがあります。

契約書に各懸案事項を記載し、買主がそれを承諾した上で、契約上の不適合について売主が責任を負わないことが記載されていれば、売主は責任を免れることになります。売買契約書において、売主の責任の範囲と期間について合意しておくことが重要です。

 

通知期間の設定

2つ目は、契約不適合責任のる通知期間を設定することです。

契約不適合責任では、買主が契約不適合を知った時から1年以内に売主に通知すれば、時効で消滅するまでは権利を行使することができた。

しかし、このままでは、売買契約締結後、何年も売主が不適合責任を問われる可能性があります。

したがって、何年も前の売買契約について、契約違反責任を問われる可能性を排除するために、通知期間を設定することが重要である。

 

調査について

最後に、売主が商品の調査を十分に行うことが重要です。

調査を行うことで、対象物の瑕疵を詳細に把握することができます。

したがって、契約の締結に際しては、対象物の正確な状態を買い手に伝えた上で、売買契約を締結することになるのです。

そうすれば、契約不適合の責任を問われる可能性も低くなります。

 

これまで、建物が雨漏りしたら契約不適合であることを例に挙げてきました。

では、売主が調査を行い、建物が雨漏りすることを知った場合を考えてみましょう。

売主は、契約時に建物が「雨漏り」する事実をしっかりと買主に伝えました。

このような前提で売買契約を締結したとします。

すると、売主と買主は、当該建物が雨漏りすることを前提に売買契約を締結したことになります。

建物が雨漏りするという合意に基づいて契約が締結されたとします。売買契約締結後に建物が雨漏りしても、買主は契約不適合責任を問われることはないのです。

8契約不適合責任を上手に付き合う方法

ホームインスペクションや瑕疵保険の活用
2018年4月以降の業法改正により、仲介会社に「建物状況調査のあっせん」が新たに義務付けられました。

いわゆる「ホームインスペクションの斡旋」です。

売主様ご自身も、所有する物件の状態をよく把握されていないことはよくあることです。

契約前にホームインスペクションを実施することで、売主は取引後の不安を解消できます。

また、構造上主要な部分や雨水の侵入を防ぐ部分については、以前から瑕疵担保責任保険に加入しておくこともトラブル回避に有効である。

雨漏り、シロアリ被害、外壁のひび割れなど、後から発見された場合、いずれも高額な工事が必要になります。

調査を行うことで起こりうるリスクとメリットを理解してもらい、ホームインスペクションや瑕疵保険を活用する方法もあるのではないでしょうか。

9おわりに

 2020年4月に民法が改正され、瑕疵担保責任が契約不適合責任に変更されてからしばらく経ちますが、実務上、特に中古住宅の場合、建物状況調査やインスペクションは破壊を伴う調査を行わない限り完璧ではありません


 例えば、築年数によっては、床下や天井裏に点検口がなく、穴を開けて床下を確認しなければならない。実は、大引きや根太が腐っていることもあります。もちろん、新しい建物には点検口が設置されているので、床を壊さずに調査することは可能ですが、それでもすべて見透かせるわけではありません。もしかしたら欠陥住宅である可能性もあります。これが中古住宅の怖いところです。新築住宅の場合、売主や施工業者が責任を果たすよう請求されることがあります。
 そこで、中古住宅の解決策として登場するのが、性能向上リフォームです。部分的なリフォームは部分的な責任ですが、性能向上リフォームは家全体を対象とするため、建物全体が保証の対象になるのです。
つまり、売主は売買契約における契約不適合の責任を負う必要がなく、不適合の責任を免除することを条件に、値下げ交渉ができるのです。もちろんそのまま契約不適合責任がある場合でも、建物の主要構造部に瑕疵がある場合、売主に改修費用(主要構造部の瑕疵部分)を請求することができます。状況に応じて臨機応変に対応できるのは、東京中古一戸建ナビの強みとなります。
そして、契約に不適合責任は、リフォーム・リノベーションの施工者である私たちが行う事になります。つまり安心して暮らせます。

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著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。

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著者情報 刈田知彰

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