中古住宅や土地を購入する際にポイントの一つに「ライフラインの状況について」があります。
弊社が所属する全宅連の重要事項説明書では『飲用水・ガス・電気の供給施設及び排水施設の設備状況』を記載する項目があります。その中で、今回は上水道(飲用水)と汚水(下水)について解説したいと思います。また汚水に関しては(浄化槽)についても補足して解説したいと思います。
『飲用水・ガス・電気の供給施設及び排水施設の設備状況』には
飲用水について、ガスについて、電気について、排水施設についての4種類の項目があります。
更にこれらの項目は
直ちに利用可能な施設、配管等の状況、整備予定・負担金にわけて説明されます。
これらの生活関連施設について重要事項説明の誤りから紛争が起きてしまうケースがよくあります。不動産の取引の際にはこれらの内容を理解し後にトラブルが無いように売主と買主で取り決めをしておく必要があります。
全宅連の重要事項説明書のフォーマットでは下記の内容となります。詳しくめていきましょう。
直ちに利用可能な施設
有 無 にチェック
直ちに利用可能な施設とは、説明時において、現に利用されている施設及び使用可能な状態にある施設をいいます。
飲用水が直ちに利用できる場合は有に印、できない場合は無に印になります。
また、有の場合は
水道(公営 私営)もしくは井戸なのかの確認をします。
公営水道は水道法の適用ありますが、井戸水水道法の適用なしになります。
配管等の状況
続いて、配管等の状況についてです。
前面道路配管の有無と口径
敷地内配管有無と口径
私設管の有無
について、記載されています。
整備予定・負担金
整備予定・負担金の有無 ある場合は予定額と必要になる年月
飲用水の調査方法を
図面を取得する
飲用水の調査方法ですが、まずは、図面です。
不動産会社が調査する際には2種類の図面を取得します。
埋設管(水道管)管理図と給水装置図面です。
埋設管(水道管)管理図はインターネットでも取得可能になり、給水装置図面は水道局で入手可能(所有者の委任状が必要になります)な図面となります。
図面を基に現地を確認
具体的には止水栓の位置、水道メーターの位置を確認します。
中には、図面が間違っている可能性もありますので、しっかりと図面と現況に違いがないかを見比べて確認します。
水道メーターボックスも確認してみよう。
水道メーターが撤去されていたり、図面と違い隣地と共有管になっていたりする可能性もあります。
また、メーターボックス(フタ等)に書かれている口径と水道メーターに書かれている口径が違うなんてこともあります。
図面と現地で設置箇所や口径の確認を行いましょう。
その他のポイントとしてはメーターの中をみてみるとパイロットが動いていています。
もし、水道を利用していない時にパイロットが動いていたら漏水の可能性が考えられます。
万が一 図面と現況が異なる危険性がある場合や上記の様に漏水が考えられる場合は、設備事業者に依頼して、事実確認を行っておくのが望ましいですが、できない可能性も考えられます。その時は売主と買主双方で取り決めをしておく必要があります。
上水道に続いて次は下水道について解説していきます。
下水には自治体が管理する部分(東京都が管理する部分)と不動産の所有者が管理しないといけない部分があります。
見極め方ですが、下水道台帳には東京都が管理している部分しか記載されていないので、どちらが管理する部分なのかはすぐにわかります。
下水道台帳にはマンホール、下水道管、公共桝しか表記されていません。
下水には排水方法が2種類
下水には排水方法は合流式と分流式の2種類が存在します。
合流式は汚水と雨水を同じ下水道で流す方法で、分流式は汚水と雨水を別々に下水道で流す方法になります。
図面に管が一本しか書かれてない場合、合流式となり分流式は2本表記されています。
東京都では23区の多くは合流式を採用しています。近年のゲリラ豪雨などに対しては比較的分流式の方が良いとされています。多摩地域などは分流式が比較的多い傾向にあります。
下水道台帳案内|東京都下水道局 (tokyo.lg.jp)
「下水道台帳」でわかることは、東京23区の公道の下水道管の埋設状況です。
下水道管の位置・深さ・管径・管種、公共桝の位置等を記載しています。
下水の排除方式(合流式・分流式)もわかります。
宅地内や私道の下水道管(排水設備)については、個人の財産のため資料がないので閲覧できません。土地の所有者又は使用者に確認するか、現地調査をお願いします。
公共桝の調査
公共桝は基本的には一(いち)敷地1つになります。複数ある場合は役所で再度確認を行いましょう。
公共桝がない場合は、排水先がない?他人敷地を通っている?隣地の公共桝も確認しましょう。また、隣地の状況も確認しておきましょう
隣地に公共桝がない場合は、自身の桝が使われている可能性があります。
公共桝から宅内桝は管径の120倍までそれ以上だと詰まる可能性がありますので、確認しましょう。
私設管の可能性も
私設管とは、下水は通常は東京都が管理しているがそこから分岐して自費で私人が管理している管を通って自分の家につながっている場合は管の所有者の確認(承諾)が必要となります。もしかしたら利用できないなんてことも考えられます。承諾には費用が発生する可能性もあります。
施設管の見極め方は簡単です。下水道台帳に記載されていないのに実際にはマンホールや桝がある場合は私設管です。
汚水の処理方法は下水に流すだけではありません個人もしくは集合させて処理をする浄化槽とタンクに貯めて回収してもらう汲み取りがあります。
浄化槽の種類と汲取式
汚水の設備は、個別浄化槽、集中浄化槽、汲取式にわかれます。
戸別浄化槽
個別浄化槽は、「個別処理方式」は、各家庭からの生活排水を、各家庭に設置された「浄化槽」により処理する方式です。
単独処理浄化槽(トイレのみ)(平成12年4月1日より新たに設置は禁止 次に設置する場合は合併処理浄化槽へ)と合弁処理浄化槽が存在します。
集中浄化槽
集中浄化槽は、「集合処理方式」は、各家庭からの生活排水や事業所などの排水を「管路施設」により「終末処理場」に運び処理する方式です。
終末処理場
公共下水も広い意味では集合処理方式になります。
浄化槽には法定検査が最低でも1年に一回は必要になります。(別で条例がある可能性も)
法定検査の記録に単独処理浄化槽か合併処理浄化槽か記載されてるいますので、外見からではわかりにくいですが、単独処理浄化槽か合併処理浄化槽かは調べる事が可能です。
合弁処理浄化槽
トイレの排水や生活雑排水(台所の排水・お風呂の排水など)を、合併処理浄化槽で浄化してから側溝(排水溝)に流します。
汲取式
汲取式とは、浄化槽ではなく「タンク」の中に汚水をためておく方法を指します。
汲み取り式は、昔「ボットン便所」と言われていたもですが、現在の多くはトイレのみ簡易水洗式で流され、まとめてバキュームカーで汲み取りを行う方式のものがあります。
これらの見極め方ですが、本下水道がそもそもあるかどうかの確認本下水道と宅地の下水がつながっているかを確認します。
公共下水以外の排水施設の場合もあります。汲み取りは臭突がある(臭いや害虫が気になる可能性も)
単独浄化槽の特徴は、マンホールが2つトイレ
合併浄化槽の特徴は、マンホールが3つ雑排水と汚水
※マンホールの数はあくまで目安です。
所有者に確認する
保守点検
清掃
定期検査などの所有者に報告書をみせてもらう
紛争例には、浄化槽がある事が、引き渡し後に発覚したなどがあります、浄化槽の除去は数百万円必要になることもあります。
法定検査の有無は?していない場合は故障している可能性が高くなり、引き続き利用できない可能性もあります。例えば売主が住んでいる場合は管理されていることが多いと思いますが、実家を相続した場合などは、これらの調べがあまいと取引後紛争につながる可能性もあります。
また、地中に今は使われてないが以前使用しているものが埋まっているケースなどもありました。
このようなケースでは、建築確認時の図面に記載してあることもあります。万が一が想定される場合は試し掘りしてみることも考慮する必要があります。
いつ処理区域に編入されたのか、それよりも前にあった建物かどうかを確認(浄化槽がある可能性が)も有効です。
汲み取りに関する紛争
浄化槽と間違えて説明している場合などがあります。
汲み取り式の場合は領収書などで業者の確認をとっておくと良いでしょう。
また、将来的に処理区域に編入する可能性があります。その場合、受益者負担金がかかる可能性があります。
東京23区は下水道100%なので可能性はほぼありませんが、多摩地域は注意が必要です。下水道課に聞き取りを行いましょう。現在また将来(いつか編入される可能性があるのか)について確認しておく必要があります。
下水道受益者負担金
下水道受益者負担金とは、下水道の設置にかかる費用を土地の面積に応じて支払う制度です。これは、まだ下水道が整備されていない自然・農地が多い地域において、下水道を整備する際に土地所有者に課せられる負担です。
通常、公共の施設や設備は税金で整備されることが一般的ですが、下水道の設置には膨大な資金が必要であり、その恩恵を受けるのは設置された地域の住人だけです。このため、下水道整備のためには、地域の住人に一部費用を負担してもらう仕組みが下水道受益者負担金です。
下水道受益者負担金の支払い額は、地域によって異なりますが、一般的には1平方メートル当たり300円から500円が相場です。支払いは土地の所有者が行い、支払いタイミングは下水道が完成して供用開始する年や前年ごろが一般的です。支払い方法としては、一括納付と分割納付があり、分割納付の場合、年に4回から5回に分けて支払うことが一般的です。
滞納すると延滞金が発生するため、支払いが難しい場合は自治体に相談し、分割回数を増やすなどの対応策を検討することができます。なお、下水道の整備によって土地の価値が上がるため、所有者は自然と整備の影響を受けることから、負担金支払いが必要とされています。
今回は、設備の状況「上下水道について」と「上水道(飲用水)について」と「(浄化槽)(汲み取り)について」解説しました。
不動産取引の際は仲介業者が入る場合は、これらの内容は1ページにまとめられ説明を受けることができますが、個人取引やもしかしたら、仲介会社の調査ミスも考えられので、その際にトラブルに巻き込まれないように、今回のコラムをご覧いただければ幸いです。
また、東京23区内では起こりにくいと思いますが、日本はインフラ老朽化問題が社会問題になりつつあります。将来的に上下水道をはじめ電気や
ガスの整備が間に合わないなんて事態も考えられます。中古住宅を購入する際には将来的な自治体の状況にもめを向けて決定しましょう。
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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