更新日:2024年3月12日
今回は不動産売買契約書について詳しく解説していきたいと思います。
通常、不動産の売買契約は、不動産売買契約書に売主・買主が署名押印をおこない成立します。
皆様は契約自由の原則という言葉をご存じでしょうか。「契約の当事者(個人であったり法人であったり)が納得していれば、その契約の内容がどのようなものであっても、それが公の秩序や強行規定に反していなければ、それは当事者が自由に締結すればいいですよ」というものです。
実は売主、買主間で自由に契約することができるのですが、それではトラブルがつきません。そこで、不動産仲介会社(売買契約書と重要事項説明書)が必要になってまいります。
不動産仲介会社(宅地建物取引業者)が売買仲介をおこなう場合には、宅地建物取引業法によって、契約が成立した際、遅滞なく宅地建物取引士が記名・押印した契約内容を記した書面37条書面(不動産売買契約書)を交付することが義務づけられています。
プロが作るので安心というわけにはいきません。不動産売買契約書がどのような契約内容になっているかを契約当事者となるご自身が詳しく知っておくことが重要です。
今回は、不動産売買契約書(37条書面)の記載内容やチェックポイントについて詳しく解説いたします。
※少しわかりにくい話ですが、37条書面は不動産会社が作成したもので売買契約書とは厳密に言えば異なります。冒頭で申したとおり、売買契約書は当事者間の同意があればよいですが、37条書面には必ず記す記載事項が存在し、好き勝手に作成できるものではありません。正確には今回は37条書面の解説となります。
1.売買の目的物及び売買代金
売主が所有している売買対象の不動産を、契約書記載の売買代金をもって買主が買い受けることを規定しています。
売買代金のほか、取引対象となる不動産を明確化するために、土地・建物の所在や地番などの売買対象となる不動産の詳細情報が記載されています。
また、マンションの場合には、区分所有建物の詳細情報や敷地権の目的たる土地の詳細情報について記載がされます。
2.売買対象面積
売買対象となる土地・建物などの面積に関する規定が定められています。
土地は、登記事項証明書(登記簿)に記載されている土地面積を取引対象とする方法と、
実際に測量をおこない得られた実測面積を取引対象に用いる方法があります。
実測取引、公簿取引と呼ばれます。
さらに、不動産売買契約締結後に測量を行う場合には、登記事項証明書(登記簿)に記載された面積と差異が生じた面積増減分について、別途売買代金の清算をおこなう場合と実測面積に差異が生じたとしても清算をおこなわない場合など事前に契約条件をすりあわせた上で、契約条文に規定します。
過去の事例では登記簿と実測面積に100㎡違いがあった場合があります。売主が気づいて測量をし直していましたが、実は公簿面積は実測面積と異なる可能性があることを知っておきましょう。シビアな状況な時は契約に清算方法を決める必要があります。
3.手付
不動産売買契約を締結した際に、買主が売主に支払う手付金の額が規定されています。
また、手付金は、残代金支払い時に売買代金の一部に無利息にて充当されることが規定されることが一般的です。
4.境界の明示
土地・戸建の不動産取引の場合には、売主は、買主に隣地との土地の境界を現地にて境界標の明示をおこなうことを規定しています。
なお、境界標がないときは、売主は、隣地所有者の立会い・承諾のもと、新たに境界標を設置して境界を確定させることが必要となります。
5.売買代金の支払時期及びその方法
売買代金の支払い方法や内金および残代金のそれぞれの金額および支払日が規定されています。
6.所有権移転の時期
買主が売主に売買代金全額を支払った時点で、売主から買主に所有権が移転することを規定しています。
7.引渡し
不動産の引渡し日が規定されています。
前述の「所有権の移転の時期」の規定により所有権移転日と不動産の引渡し日は、同じ日となることが一般的ですが、
住まいの買い替えに伴なう売却などの場合には、必要に応じて引渡し日を別途規定することもあります。
8.所有権移転登記の申請
売主は売買代金の受領と同時に買主への所有権移転の登記申請をしなければならないことが規定されています。
また、所有権移転登記申請に要する費用は、買主の負担と規定することが一般的です。
9.物件状況の告知
売主は、不動産売買契約締結時点における不動産に関する状況を「物件状況等報告書」によって買主に説明することを規定しています。
後述の「契約不適合責任」規定と関連する内容となりますので、正確な状況の記載が必要となります。
10.付帯設備の引渡し
売主は、不動産に付帯する主要設備の引渡しの有無を「設備表」へ記載し、その記載内容をもって各設備を引渡すことを規定しています。
引渡す設備の内、故障・不具合を無とした主要設備については、売主は使用可能な状態で引渡すこと、
また、故障・不具合を無とした主要設備については、通常、引渡し完了日から7日以内に請求を受けた故障・不具合について、売主が修復する責任があることも規定しています。
11.負担の消除
売主は、所有権移転時期までに、抵当権・賃借権などの買主への所有権移転を阻害する一切の負担を除去・抹消することが規定されています。
12.印紙代の負担
売主及び買主は、各自が保有するこの契約書にその負担において法令所定の印紙を貼付する。ことが明記されています。
13.公租・公課の負担
本物件に対して賦課される公租・公課は、引渡し日の前日までの分を売主が、引渡し日以降の分を買主が、それぞれ負担する。など、固定資産税等の精算方法について明記します。
14.収益の帰属・負担金の分担
第14条 本物件から生ずる収益の帰属及び各種負担金の分担については、前条第1項及び第3項を準用する。
15.手付解除
不動産売買契約書に記載された手付解除期日までであれば、売主は手付金の倍額を買主に支払い、
また、買主は手付金を放棄することで不動産売買契約を解除できるとした手付解除に関する規定が定められています。
17.契約違反による解除
売主、または、買主が、不動産売買契約の債務の履行を怠ったときには、その相手方に対し、書面により債務の履行を催告した上で、不動産売買契約を解除して、違約金の支払いを請求することができるとした規定が定められています。
18.反社会的勢力の排除
反社会的勢力と関係がある場合にどのような対応になるのかを詳しく記載します。
19.融資利用の場合
不動産売買においては、買主の多くは銀行からの融資(住宅ローン)を利用して売買代金を支払いますが、
万一、買主が融資を得られない場合には、融資承認取得期日までであれば、不動産売買契約を解除できるとした特約を定めることが一般的です。
また、不動産売買契約書には、融資利用の申込先、融資承認取得期日、融資金額、融資利用の特約に基づく契約解除期日を記載します。
20.契約不適合責任
不動産の引渡し完了後、一定期間の間に、不動産に隠れたる瑕疵が見つかった場合の売主の契約不適合責任に関する内容が規定されています。
契約不適合責任期間は、個人間の取引の場合、引渡し完了日から1ヵ月や3ヵ月と規定することが一般的です。
21.諸規約の承継
売主は、買主に対し、環境の維持又は管理の必要上定められた規約等に基づく売主の権利・義務を承継させ、買主はこれを承継する。内容も明記されます。
22.協議事項
この契約に定めがない事項、又はこの契約条項に解釈上疑義を生じた事項については、民法その他関係法規及び不動産取引の慣行に従い、売主及び買主が誠意をもって協議し、定めるものとします。
23.管轄の合意
この契約に関する訴訟・調停その他一切の紛争の管轄裁判所を、本物件所在地の管轄裁判所と定めるものとします
24.特約条項
その他、別記特約条項がある場合は特約条項に記載します。
繰り返しになりますが、不動産売買契約書は、仲介を依頼した不動産仲介会社が作成することになります。
しかし、不動産売買契約書の内容は、契約当事者であるあなたが理解することが最も重要です。
また、不動産売買契約書の内容は、契約書ごとに異なるため、確認すべきポイント他にもあるかもしれません。
前述の「不動産売買契約の一般的な条項について」で説明した内容に加えて、以下の点については、ご自身で必ず確認するようにしてください。
不明な点や不安な点があれば、不動産売買契約書にサインする前に、納得がいくまで不動産仲介業者に確認しましょう。
不動産売買契約書・重要事項説明書の内容を確認する
まず、不動産売買契約書に記載されている、売却する不動産の範囲、売買価格、手付金の額などの内容に漏れや誤りがないかを確認します。
また、重要事項説明書の内容や、登記事項証明書(登記簿)、測量図など重要事項説明書に添付されている書類も確認する。
契約条件に定めや不明な点がないかを確認する。
や、契約不適格責任期間、設備修補責任期間などが明確になっているかどうかを確認する、
また、手付解除日、融資承認日、残金支払日、引渡日が適切に設定されているかどうかを確認する。
信頼できる不動産仲介会社に依頼する
ここまで、不動産売買契約書について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
なかなかのボリュームではないでしょうか。これに加えて、重要事項説明書の説明も受けるわけですから、大変です。
しかし、不動産売買契約書に定められている各条項は、高額な不動産の売買を伴う取引を安全かつ確実に成立させるために設けられた重要な規定です、
したがって、契約当事者である買主・売主には、契約の内容や条件についてご理解いただくことが必要です。
不動産売買契約に関する疑問や不明点は、不動産仲介会社の担当者にご相談ください、
不動産売買契約書に疑問点や不明点がある場合は、不動産仲介会社のスタッフに納得がいくまで確認してください。
不動産仲介会社は、売主と買主の双方の利益を守る大切なパートナーです、
不動産売買を安全・確実に成功させるためには、なくてはならない存在です。そのため、まずは信頼できるパートナーとなる不動産仲介会社を選ぶことが大切です。
今回は不動産売買契約いついて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。不動産売買契約書をすべて理解することはとても難しく思いますが、どれも重要な条項となっておりますので、今回のコラムを参考にして頂ければ幸いです
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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