更新日2024/2/20
1.はじめに
皆様は土地には種類があることをご存じでしょうか。地目と言います。今回は地目について解説したいと思います。地目を知ることで、もしかしたら得をすることがあるかもしれませんし、売却時や購入時に地目によってトラブルに遭遇してしまう事を未然に防げることがあるかもしれません。また、見た目では地目は分かりませんので、そのあたりも詳しく解説していきたいと思います。
地目(ちもく)とは、土地の用途を表すもので、田・畑・宅地・山林・雑種地など全部で23種類あります。
全23種類の地目は、不動産登記法で定められており、地目の定め方も準則で定められています。
地目は、法務局が管理する土地の登記簿の表題部に、土地の所在、地番、地積などと共に記録されています。土地の登記簿の表題部というのは、土地一筆ごとに、次のように法務局で作成され、管理されています。
地目は、不動産登記規則第99条で、23種類が定められているので、勝手に地目を作って、定めるなんてことをすることはできません。また、一筆の土地に2つ以上の地目は認められていません。土地一筆につき、地目を1つが定められています。変更があった場合など、土地の所有者が勝手に定めるのではなく、所有者からの登記申請や、登記官の職権によって、最終的に全23種類の地目から最適な地目1つを登記官が認定します。
そして、登記官によって認定された地目は、一筆の土地ごとに作成されている登記簿の表題部に記録されるのです。
法律により定義されている全23種類の地目不動産登記事務取扱手続準則第68条では全23種類の地目とそれぞれの地目の定義が、次のとおり定められています。
田:農耕地で用水を利用して耕作する土地
畑:農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
宅地:建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
学校用地:校舎,附属施設の敷地及び運動場
鉄道用地:鉄道の駅舎,附属施設及び路線の敷地
塩田:海水を引き入れて塩を採取する土地
鉱泉地:鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地
池沼:かんがい用水でない水の貯留池
山林:耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
牧場:家畜を放牧する土地
原野:耕作の方法によらないで雑草,かん木類の生育する土地
墓:地人の遺体又は遺骨を埋葬する土地
境内地:境内に属する土地であって,宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地(宗教法人の所有に属しないものを含む。)
運河用地:運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地
水道用地:専ら給水の目的で敷設する水道の水源地,貯水池,ろ水場又は水道線路に要する土地
用悪水路:かんがい用又は悪水はいせつ用の水路
ため池:耕地かんがい用の用水貯留池
堤:防水のために築造した堤防
井溝:田畝又は村落の間にある通水路
保安林:森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地
公衆用道路:一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない。)
公園:公衆の遊楽のために供する土地
雑種地:以上のいずれにも該当しない土地
の全23種類です。
地目は、目的によって登記地目と現況地目、課税地目に区分されています。
登記地目(とうきちもく)
法務局が管理している不動産登記簿に記録された地目のことです。
現況地目(げんきょうちもく)
現在の実際の土地の現況から判断した地目のことです。
課税地目(かぜいちもく)
固定資産や相続税の評価基準を目的とした地目のことです。
これらの内、登記地目と、実際の土地の現況地目は、本来は一致しているはずです。
なぜなら、その土地の登記を行ったときに、現況や利用状況から判断して、登記地目を定めているからです。ですが、登記地目は、土地の現況と一致していないこともあります。
たとえば、山林を切り開いた実際の土地は建物が建っていて、地目は宅地と判断できるが登記地目は山林のままになっている場合などがあります。
このように登記地目と現況が異なる場合には、本来、地目変更登記を行って一致させるべきなのですが、地目変更登記を行っていない土地もあるのです。
土地の現況や利用状況に変化があり、登記地目と一致しなくなった場合には、1ヶ月以内に地目変更登記をしなければならないことが定められています。
この地目変更登記は、土地の表題部所有者、または、所有権の登記名義人に申請義務があります。
もし、地目が変わっているのに、申請義務者が地目変更登記を怠った場合には、10万円以下の過料に処せられます。
課税地目について
国税庁
土地の地目の判定
【照会要旨】
土地の地目はどのような基準で判定するのでしょうか。
【回答要旨】
土地の地目は全て課税時期の現況によって判定することとし、地目の区分は不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付民二第456号法務省民事局長通達)第68条及び第69条に準じて判定します。
なお、同準則に定める地目の定め方の概要は次のとおりです。
(1)宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地
(2)田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
(3)畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
(4)山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
(5)原野 耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
(6)牧場 家畜を放牧する土地
(7)池沼 かんがい用水でない水の貯留池
(8)鉱泉地 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地
(9)雑種地 以上のいずれにも該当しない土地
(注) 駐車場(宅地に該当するものを除きます。)、ゴルフ場、遊園地、運動場、鉄軌道等の用地は雑種地となります。
国税庁ホームページ参照
6.地目の注意点
土地の売却時や購入時に注意点があります。前述でも地目の変更があった場合は、不動産登記法で一定期間内に地目変更の登記を行う必要があると解説させて頂きましたが、登記簿上の地目と現況が一致していない場合があり、その状態で土地の売却を行うと、トラブルになる可能性があるのです。特に、相続で土地を承継した場合などは古くから存在している土地などの多くは、地目の変更登記が行われてないことが普通です。土地を購入する側としても、登記上の地目と現況が異なっていないかどうか確認する必要があります。しかし、土地を売却する側も現況に合った地目で登記をしておくことで、購入者とのトラブルを防ぐことができる可能性が高まります。
7.地目の種類代表的な「宅地」「田」「畑」「山林」「雑種地」の売買時のポイント
宅地・田・畑・山林・雑種地これら5つについては、一般の方でも比較的売買の対象になりやすいためより理解しておくことが望ましいと思います。
最初に地目「宅地」ですが、土地売却において最も関連が多いと思います。宅地は、建物の敷地およびその維持もしくは効用を果たすために必要な土地を指し、「住宅や店舗を建設して利用することに適した土地」です。土地を購入する際、多くの人が宅地を探す傾向があり、通常は売却においても問題なく取引が行われやすいのが「宅地」になります。
宅地の定義は不動産登記法や他の法律でも規定されており、宅地建物取引業法では建物の敷地や建物を建てる目的で取引される土地が宅地とされています。土地区画整理法においては、公共施設の用途に供されていない土地が宅地とされています。更地は建物がなく、一切の権利がついていない状態の土地を指し、建付地は建物が建っている土地を指します。また、土地を所有ではなく借りている場合は借地と呼ばれます。
宅地を売却する際の特徴となるのが、節税の余地が大きいことです。宅地を売却すると、譲渡益が発生し、これが所得税や住民税、復興特別所得税の課税対象となります。譲渡年の1月1日時点で5年を超えて保有している場合は長期譲渡となり、5年未満であれば短期譲渡となります。
短期譲渡に該当した場合の税率は約40%であり、長期譲渡の場合は原則として約20%の税率が適用されます。ただし、一定の宅地の場合は軽減税率が適用され、税負担が軽減される可能性があります。また、所有期間が10年を超える場合は、譲渡益6,000万円までの税率は約14%となります。自己の居住用の宅地を売却した場合は、条件を満たすと譲渡益から3,000万円を控除できる特例もあります。
さらに、相続において小規模宅地の特例を適用する場合は、相続税評価額の評価減が行われますが、特例の適用を受けるためには相続で承継した土地を継続して保有していることが条件となります。申告前に売却すると特例の適用を受けられなくなるため、売却を検討する際には税法を理解し、節税の計画を立てることが重要です。
続いて地目「田」は、不動産登記法上で定義されるもので、「農耕地で用水を利用して耕作する土地」を指します。一般的には田んぼを指し、全国的に広く見られ、特に地方地域で多く存在します。興味深いことに、田として登記されていても、住宅が建っている場合があります。このような事例は、地目の変更がなされていないために生じています。
田んぼを売却する際に留意すべきなのは、農地法の規定を遵守することです。農地を無許可で転用し、たとえば賃貸アパートを建設するなどの行為は無効とされ、原状回復する責任が発生します。同様に、農地を第三者に売却する場合も、事前に許可を得る必要があります。従って、田んぼを売却する際には都道府県の許可を取得するよう心がけましょう。
ただし、市街地の中にある田んぼなど、市街化区域内の農地を別の用途に転用する場合は、市町村に届け出るだけで転用が可能です。農地法において、農地と認定されるかどうかは、登記上の地目ではなく実際の使用状況に基づいて判断されます。
「畑」は不動産登記法上の地目で、野菜などを栽培している土地を指します。畑の特徴は、農耕地で用水を利用せずに耕作される土地であることです。言葉通り、野菜の栽培に使用される土地を示す地目となります。
畑を所有する者の中には、手入れが煩雑で管理が難しいと感じる方もいるでしょう。このような場合、畑を売却するという選択肢が考えられます。ただし、この際も田と同様に、農地法の手続きに従って都道府県からの許可を得る必要があります。
また、農業振興地域に指定されている土地の場合は、転用前に農業振興除外申請が必要です。事前に売却を検討する場合は、市町村の農政課などを通じて地域の境界線や手続きについての確認を行っておくことが重要です。これによって、スムーズな売却プロセスが確保され、問題を未然に防ぐことができます。
不動産登記法上の地目「山林」は、木が生育している山を指します。山林の売却にはいくつかのポイントがあります。
使用収益に関する法的な制約の存在
山林が土砂災害警戒区域に指定されていたり、公園に指定されている場合など、法的な制約が存在することがあります。これにより、購入者が建築物を建てることができない場合があります。売却を進める際には、土地の利用目的を山林のまま利用する層に絞ってアプローチすることが重要です。
山に生えている木の譲渡益の取り扱い
山林を売却した場合、土地の売却だけでなく、山に生えている木による譲渡益も考慮する必要があります。土地の売却による利益は不動産の譲渡所得に分類され、同時に山に生えている木の譲渡による所得は山林所得に分類されます。これらの所得計算方法は異なるため、注意が必要です。
山林の取引においては、これらの法的制約や所得の取り扱いに注意を払いながら、適切なアプローチを検討することが重要です。
不動産登記法上の地目「雑種地」は、他のどの地目にも該当しない土地を指します。通常、土地の見た目や利用形態からは特定の地目が明確でない場合や、明確な地目が存在しない場合に、登記上で雑種地として分類されることがあります。野原などの一般的な土地で、具体的な用途が不明確な場合に雑種地として扱われることがあります。実際の用途が特定しづらい土地に対する便宜的な分類といえます。
雑種地を売却する際のポイントとして、以下の事項が考えられます:
実態に合った地目変更
雑種地の登記上の表記は、購入者にとってはマイナスイメージとなることがあります。売却を円滑に進めるためには、実際の用途や特性に合わせて別の地目に変更することが検討されます。これにより、購入者に対してもより具体的な情報が提供され、取引がしやすくなります。
購入者のイメージへの配慮
雑種地としての印象が強い場合、購入者にとっては不透明さやリスクを感じることがあります。売却を検討する際は、購入者の立場に立ち、できる限り明確で分かりやすい情報提供を心がけると良いでしょう。
雑種地の売却においては、地目変更や十分な情報提供を行うことで、スムーズかつ安定した取引が期待できます。
登記地目を確認したい場合、一番確実なのは、土地の現在の登記事項証明書を確認する方法です。
登記事項証明書には土地の所在、地番、地目、地積(面積)など、登記内容が記載されているからです。
登記事項証明書は、近くの法務局の窓口に出向いて、交付請求書に必要事項を記入し、手数料分の収入印紙と一緒に提出すれば、誰でも取得できます。
また、インターネットでも取得することが可能なのですが、準備が大変なので、一般の方が取得する方法としては、おススメできません。
基本的には大丈夫です。
地目が「農地法上の農地に該当するもの(田や畑など)」の場合には注意が必要です。
農転(農業委員会から農地転用の許可を受ける)その後宅地に変更する手続きが必要な場合などがあります。
住宅ローンを利用するということは必ず建物が建てれる土地即ち宅地になっていますので、基本的には上記でも説明しましたが、宅地以外の場合、地目に変更がある場合やあった場合は必要に応じて地目変更登記を行いましょう。
今回は地目について詳しく解説してみました。売買の場合基本的には宅地です。違ったとしても山林の取引がほとんどなので、それ以外の地目だった場合(ドキッ)と私もします。
問題が発生する前に確認して状況に応じた適切な対応をとりましょう。
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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