2022.12.07
不動産ガイド 告知事項 不動産知識 その他

国土交通省が宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインを策定しました。

更新日:2023/12/19

 

はじめに

いきなりですが、告知事項有という表示を見たことはありますか。

告知事項にも大まかに分けると4つあります。

「心理的瑕疵」

「環境的瑕疵」

「物理的瑕疵」

「法的瑕疵」

の4つになります。

 

今回は「心理的瑕疵」に関する人の死の告知に関するガイドラインが国土交通省により策定されましたので、こちらを解説させて頂きます。

 

ここからの内容は国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課

宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドラインから引用しています。

 時間の無い方はガイドラインのまとめに飛んでお読みください。

 

1.背景・経緯

〇不動産取引にあたって、取引の対象不動産において過去に生じた人の死に関する事案について、宅地建物取引業者による適切な調査や告知に係る判断基準がなく、取引現場の判断が難しいことで、円滑な流通や、安心できる取引が阻害されているとの指摘があります。

 

 国土交通省では、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、令和2年2月より「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」において検討を進め、同検討会での議論や、本年5月から6月に実施したパブリックコメントを踏まえ、標記ガイドラインをとりまとめました。

2.本ガイドラインの適用範囲

(1)対象とする事案 本ガイドラインにおいては、取引の対象となる不動産において生じた人の死に関する事案を取り扱うこととする。

(2)対象とする不動産の範囲 住宅として用いられる不動産(居住用不動産)とオフィス等として用いられる不動産を比較した場合、居住用不動産は、人が継続的に生活する場(生活の本拠)と して用いられるものであり、買主・借主は、居住の快適性、住み心地の良さなどを期待して購入又は賃借し、入居するため、人の死に関する事案は、その取引の判断に影響を及ぼす度合いが高いと考えられることから、本ガイドラインにおいては、 居住用不動産を取り扱うこととする

 

 告知について 冒頭の繰り返しとなるが、人の死は日々各地で発生しているが、それがいわゆる心理的瑕疵に該当するか、その継続性の評価は、事案の態様・周知性等や当該物件の立地等の特性によって異なり、時代や社会の変化に伴い変遷する可能性もあります。

また、 いわゆる心理的瑕疵は時間の経過とともに希釈され、やがて消滅するとの裁判例もあります。その上、不動産取引における人の死に関する事案の評価については、買主・借主 の個々人の内心に関わる事項であり、それが取引の判断にどの程度の影響を及ぼすかについては、当事者ごとに異なります。

 このため、本ガイドラインでは、裁判例等も踏まえて、可能な範囲で、現時点で宅地建物取引業者による告知の範囲として 妥当と考えられる一般的な基準を以下の通り示すこととされます。

 

(1) 宅地建物取引業者が告げなくてもよい場合について

①賃貸借取引及び売買取引の対象不動産において自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合

 老衰、持病による病死など、いわゆる自然死については、そのような死が居住 用不動産について発生することは当然に予想されるものであり、統計においても、 自宅における死因割合のうち、老衰や病死による死亡が9割を占める一般的なものである。

 また、裁判例においても、自然死について、心理的瑕疵への該当を否定したものが存在することから、買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いものと考えられ、対象となる不動産において過去に自然死が生じた場合

※高松高判平成 26 年6月 19 日判時 2236 号 101 頁 8 交換契約においても、本ガイドライン上、売買契約に準じた扱いとする。人口動態統計(令和元年)における「自宅での死亡者数(188,191 人)」から、「傷病及び死亡の外因(16,174 人)」を控除した死亡者数が占める割合。 10 東京地判平成 18 年 12 月6日WJほか。

原則として、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、これを告げなくてもよい。

 このほか、事故死に相当するものであっても、自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中で生じた不慮の事故による死については、そのような死が生ずることは当然に予想されるものであり、これが買主・借主の判断に重要な影響を及ぼす可能性は低いと考えられることから、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、自然死と同様に、原則として、これを告げなくてもよい。

 ただし、自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、取引の対象となる不動産において、過去に人が死亡し、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等(以下「特殊清掃等」という。)が行われた場合においては、買主・借主が契約を締結するか否か の判断に重要な影響を及ぼす可能性があるものと考えられるため、後記及び(2) に従う。

 

②賃貸借取引の対象不動産において①以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった①の死が発覚して、その後概ね3年が経過した場合

 ①以外の死が発生している場合又は①の死が発生して特殊清掃等が行われた場合、いつまで事案の存在を告げるべきかについては、その事件性、周知性、社会に与えた影響等により変化するものと考えられるが、賃貸借取引については、過去の裁判例等を踏まえ、賃貸借取引の対象不動産において①以外の死が発生している場合又は①の死が発生して特殊清掃等が行われた場合には、特段の事情がない限り、これを認識している宅地建物取引業者が媒介を行う際には、①以外の死が発生又は特殊清掃等が行われることとなった①の死が発覚してから概ね3年間を経過した後は、原則として、借主に対してこれを告げなくてもよい。ただし、 事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案はこの限りではない。なお、借主が日常生活において通常使用する必要があり、借主の住み心地の良さに影響を与えると考えられる集合住宅の共用部分は賃貸借取引の対象不動産と同様に扱う。

 

 ③賃貸借取引及び売買取引の対象不動産の隣接住戸又は借主若しくは買主が日常 生活において通常使用しない集合住宅の共用部分において①以外の死が発生した場合又は①の死が発生して特殊清掃等が行われた場合、賃貸借取引及び売買取引において、その取引対象ではないものの、その隣接住戸又は借主もしくは買主が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分や孤独死などが発生した住居において、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービス(「遺品整理のサー ビスをめぐる現状に関する調査結果報告書」(令和 2 年 3 月 総務省行政評価局))例えば、ベランダ等の専用使用が可能な部分のほか、共用の玄関・エレベーター・廊下・階段のうち、買主・ 借主が日常生活において通常使用すると考えられる部分が該当するものと考えられる。 場合において①以外の死が発生した場合又は①の死が発生して特殊清掃等が行われた場合は、裁判例等も踏まえ、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、原則とし て、これを告げなくてもよい。ただし、事件性、周知性、社会に与えた影響等が 特に高い事案はこの限りではない。

 

(2)上記(1)①~③以外の場合 上記(1)①~③のケース以外の場合は、宅地建物取引業者は、取引の相手方等 の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、買主・借主に対してこれを告げなければならない。 なお、告げる場合は、宅地建物取引業者は、前記3.の調査を通じて判明した点について実施すれば足り、買主・借主に対して事案の発生時期(特殊清掃等が行わ れた場合には発覚時期)、場所、死因(不明である場合にはその旨)及び特殊清掃等が行われた場合にはその旨を告げるものとする。ここでいう事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合には発覚時期)、場所、死因及び特殊清掃等が行われた旨については、前記3.で示す調査において売主・貸 主・管理業者に照会した内容をそのまま告げるべきである。なお、売主・貸主・管理業者から不明であると回答された場合、あるいは無回答の場合には、その旨を告げれば足りるものとする。

(3)買主・借主から問われた場合及び買主・借主において把握しておくべき特段 の事情があると認識した場合等 上記(1)及び(2)が原則的な対応となるが、これにかかわらず、取引の対象 となる不動産における事案の存在に関し、人の死に関する事案の発覚から経過した 期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等には、当該事案は取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられるため、宅地建物取引業者は、前記3.の調査を通じて判明した点を告げる必要がある。この場合においても、調査先の売主・貸主・管理業者から不明であると回答されたとき、あるいは無回答のときには、その旨を告げれば足りるものとする。

 

(4)留意事項を告げる際には、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、これらを不当に侵害することのないようにする必要があることから、氏名、年齢、 住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。また、買主・借主に事案の存在を告げる際には、後日のトラブル防止の観点から、また、地震等の大規模な災害により、対象となる不動産において人の死が生じたか明らかでないような場合には、その旨を告げれば足りるものとする。本ガイドラインにおいては、自然死・他殺・自死・事故死等の別を指すものとする。書面の交付等によることが望ましい。

 

ガイドラインのまとめ

ガイドラインの要件を書き出してみましたが、それでも難しいので更に簡単にまとめました。

(告知をしなくていい場合)

【1】自然死・不慮の死(賃貸借・売買取引)

•対象不動産で発生した自然死

•日常生活の中での不慮の死

 

【2】事案発生からおおむね3年が経過した死(賃貸借取引)

•通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した【1】以外の死で、事案発生からおおむね3年が経過したもの

•特殊清掃等が行なわれた【1】の死で、事案発生から“おおむね3年が経過したもの

 

【3】隣接住戸や通常使用しない共用部での死(賃貸借・売買取引)

•対象となる不動産の隣接住戸や、日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した【1】以外の死

対象となる不動産の隣接住戸や、日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した、特殊清掃等が行なわれた【1】の死です。

 

まとめ

 自然死や発生から3年過ぎれば原則は告知する必要がないという線引きがなされました。

 告知事項と一口に言っても内容や気になる程度は、人それぞれになります。どうしても自分を基準に考えてしまうと、「なぜ伝えてくれない」、逆に「その程度なら伝えてほしくなかった」など意見はまとまりません。

 業者目線では伝えた方が親切ではないか、賃貸物件の場合だとオーナー(貸主)と借主どちらサイドの目線になっていないかその線引きが難しいところでした。

 その為、高齢者の受け入れが難しいなどの課題が上げられていました。

 今回のガイドラインの策定によりこういった悩みの一部は解消されるのでうれしい反面。3年すれば告知をしてもらえないので、心理的瑕疵に対して人よりも重く受け取ってしまう人によっては、ちょっといやなガイドラインとなってしまっているかもしれませんが、今後さらに高齢化社会に進んでいく日本の住宅事情に対しては適切な内容と言えるのではないでしょうか。

 

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著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。

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著者情報 刈田知彰

 

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