皆様は2025年にすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務化されることを、ご存じでしょうか。
令和4年(2022年)6月17日に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」が公布された。
この法改正によって2025年より新築住宅の「省エネ基準が適合義務」になります。
また、将来的にはストック住宅(中古住宅)も2050年にはZEH水準の断熱性能の確保が必要になる予定です。
つまり、ストック住宅(中古住宅)の価値が大きく毀損される可能性があるのです。
詳しくご説明させて頂きます。
まず、なぜ省エネ基準が適合義務化されるのでしょうか。
2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、我が国のエネルギー消費量の約3割を占める(家庭・業務部門)建築物分野における取組が急務となっています。
また、温室効果ガスの呼吸源対策の強化を図る上でも、我が国の木材需要の約4割を占める建築物分野における取組が求められているところです。
このため、今現在そして未来へ、建築物の省エネ性能の一層の向上を図る対策の根本的な改善や、建築物分野における木材利用の更なる促進に資する規制の合理化などを講じる必要があるのです。
2050年にカーボンニュートラルを達成するために省エネ基準の適合義務化がその先駆けとして必要になるのです。
「カーボンニュートラル」最近よく聞きますが、皆さまはその意味ご存じでしょうか。「カーボンニュートラルを達成するために」と前述で書きましたが、実際にカーボンニュートラルとは何なのでしょうか?
カーボンニュートラルとは
温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。
ことの発端は地球温暖化問題から始まります。いつから地球は暑くなっているのか。実は研究結果によって、はっきりわかっています。人間が石炭と石油新しいエネルギーを利用するようになってからです。この頃から急速に気候変動に突き進んでいきました。近年の異常気象にも関係しているのではないかと言われています。
1988年IPPC{国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織で世界の科学者が発表する論文や観測・予測データから、政府の推薦などで選ばれた専門家がまとめます。}が創設されてから地球の温暖化について調査が行われました。2001年地球温暖化は人類の活動によるものという研究結果の報告がなされました。2014年には温室効果ガス 主に二酸化炭素(CO2)の排出量と比例していると発表し、2014年にノーベル平和賞を受賞しました。
2015年には190か国が集まりパリ協定が採択されて世界共通の長期目標として合意されました。
二酸化炭素(CO2)をこのまま出し続けると
二酸化炭素(CO2)をこのまま出し続けると気温が数度上がることにより通常考えられない異常気象が起こります。昨今の異常気象もこれらに起因している可能性があります。
また、気温の上昇に伴い、海面が沈み世界の主要都市が沈んでいく可能性が高いのです。
今以上の異常気象が起こると人類は滅亡してしまう可能性もあります。このまま対策をしなければ恐ろしい結末が待っています。
このような未来が来ない為にもパリ協定では
世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること
等が合意されました。
この実現に向けて、世界が取組を進めており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げて目標へ向かっているところです。
日本でも2020年10月、当時の菅首相は所信表明演説で、
「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」
と力強く表明しました。
日本いや地球全体で様々な角度からカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向かう方法、施策が行われます。
当然、住宅建築やリフォーム業界も例外ではありません。
一般に私たちが住む家に一番関係してくるのが、省エネ基準の引き上げと基準への適合になります。
2025年基準やZEH基準ではない家はこれらの世界的な動きに反する住宅になってしまいます。
ずばり今家を買おうと思っている方やリフォーム、リノベーションをお考えの方は必ず知っておかなければ、折角購入したりリフォームしたり、リノベーションを行った家の価値が0になってしまう可能性があるのです。
省エネ対策として様々な施策が発表されていますが
重要なのが「省エネ性能の底上げ」です。
原則全ての新築住宅・非住宅に「省エネ基準適合」を義務付けることとしています。
省エネ基準への適合性の審査はすでに義務付けされている中大規模非住宅と同様建築確認手続きの中で行います、審査側申請側の十分な準備期間を確保しつつ2025年度までに施工される予定です。
省エネ基準とは、建築物が備えるべき省エネ性能の確保のために必要な建築物の構造及び設備に関する基準になります。住宅の省エネ基準には次の2つの基準があります。
①外皮性能基準:屋根や外壁などの断熱性能に関する基準。高断熱になるほど良い。日本列島を8区分に分けそれぞれ基準値以下であることが求められる。
②一次エネルギー消費量基準:冷暖房や照明、給湯器など住宅内で消費されるエネルギー量に関する基準。省エネ・高効率設備にするとエネルギー消費量が少ない。
この2つになります。日本政府が求めている省エネ住宅とは、外皮性能が高く、一次エネルギー消費量が少ない住宅のことです。
省エネ基準の概要
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001390008.pdf参照
2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みとして政府の目標は
2050年 ストック平均で、ZEH⁺ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス/ビル)水準の省エネ性能の確保を目指す
2030年 新築について、ZEH⁺ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス/ビル)水準の省エネ性能の確保を目指す
と段階的にはなっておりますが、根本的な取り組みの強化が必要不可欠です。
つまり省エネ基準の水準も上がる見込みです。
現時点では確定はしておりませんが、住宅でいうと2030年度には「ZEH(ゼッチ)基準」に引き上げられます。
ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称です。
ゼロエネルギーという名の通り、年間の一次消費エネルギーをゼロ以下にした住宅のことを指します。簡単に言えば日常生活で使うエネルギーよりも太陽光発電でつくるエネルギーをゼロ以上にするという考え方です。
「断熱性能」UA値(外皮平均熱貫流率)「省エネ性能」省エネ効果の高い設備「創エネルギー」太陽光発電などの導入の3要素が必要で、それぞれクリアすべき基準が設定されています。
「創エネルギー」については現在の状況では基準クリアはまだ難しいとして、将来的な太陽光パネル等の設置促進の取り組みを進めるレベルに留め、設置義務化は当面見送りとされています。
2030年に引き上げられる水準としての「ZEH基準」では、「創エネルギー」を除いた「断熱性能」「省エネ性能」のクリアが求められ可能性が高いのです。
2025年度から義務化される「省エネ基準」適合が2030年度からはさらに厳しい「ZEH基準」に引き上げられるということになります。
カーボンニュートラルを達成するためには「ZEH基準」の住宅を増やす事が重要です。住宅が目標以上の数値を達成すればあまった二酸化炭素(CO2)の排出量を他の分野に回すことができます。つまりその分の経済効果にもつながります。システム的に将来的に二酸化炭素(CO2)の排出量の取引は活性化されることは目に見えています。現に東京証券取引所では二酸化炭素(CO2)排出量取引の実証実験が始まっています。世界世界単位の取り組みですが、個人単位でもすることができます。これから住宅を購入したり、建築、リフォームしている方は特にですが、そうでない方も関わってきますので正しく理解する必要があります。
カーボンニュートラルの流れは、私たちが死ぬまで向き合っていかなくてはならない世界的な流れです。
建築業界だけではなくすべての業界が2050年に向かって努力しなければなりません。
「2025年省エネ基準義務化」の前に、わが国でも2020年に省エネ住宅の義務化が予定されていましたが、白紙となっていた経緯があります。
今回の省エネ基準義務化は、「カーボンニュートラル」の問題だけでなく、日々の暮らし健康で快適な生活を送る上でも喜ばしいことです。
注意しなければならないのが、義務化までに建てられる家や、リノベーションされる建物についてです。
前述の通り2021年~2030年までの義務化の流れを追っていきますと、2025年基準では終わりではなく始まりです。ますます省エネ適合基準の基準そのものが上がっていくと考えた方が良いでしょう。
日本の住宅事情を思い返してみましょう。新耐震基準を例に挙げると、それ以前とそれ以後の建物では価値が大きく変わります。同じように、現状の基準で家を建ててしまったり、リフォームをしてしまうと2030年以降には建物の価値は大きく棄損してしまうということです。そうならために今の段階から将来を見越した基準で建物を建てる必要がありますよね。また、世界がカーボンニュートラルに向かっているからという大きな理由もありますが、省エネ基準の家に住むということは、光熱費が安くなります。断熱性能アップに有した費用も返ってくることになるでしょう。また、健康面でもアレルギーの原因となるカビやダニの発生を防ぐことにつながったりヒートショックの原因の緩和につながり健康という面でもメリットがあることでしょう。
義務化はまだだからと考えるのではなく、長期的な視点で、2030年以降の基準も想定したうえで、建物の省エネ性(断熱性能)を考える必要があるのではないでしょうか。
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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