更新日2023/12/15
建物の購入や新築の際、耐震性を表す言葉として「耐震等級」という言葉がよく使われます。日本は地震の被害に見舞われることが多いですが、昨今では「耐震」という言葉をよく耳にするようになりました。なんとなく「耐震等級」という言葉の意味を理解しているように思いがちですが、実際にその意味を理解している人は稀でしょう。
「耐震等級」の基礎知識を身につけることで、安心・安全な家づくりや家選びに役立てることができます。今回は、「耐震等級」の基礎知識について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
家を建てる、選ぶ条件として地震への強さ「耐震性」を重視される方は多いと思います。しかし、建築の素人である私たちは、図面を見ただけでは、その家の強さをどう評価すればよいのかわかりません。そんな素人にもわかる目安として示されているのが、「耐震等級」という基準です。まずは、「耐震等級」の考え方と、家の強さを決める要素について見ていきましょう。
耐震等級とは?
耐震等級とは、建物の地震に対する強さを表す指標の一つです。住宅の性能表示制度を定めた「品確法」に基づき制定されました。耐震等級は、以下の項目に基づいて行われます。「構造躯体の倒壊等防止」、「構造躯体の損傷防止」、「その他」の3項目で評価されます。数値が高いほど耐震性が高いことを意味し、建築や購入の際の目安になります。
また、免震や制震という言葉もよく耳にしますが、これらは耐震性とは別の方向から建物を守ろうとするものです。免震は、建物に入る地震の揺れを小さくすることで、住宅内部や建物自体の安全性を守るものです。地震の揺れが建物に伝わらないような構造にすることが目的です。また、建物内部には制震ダンパーを設置し、地震の揺れを吸収するというものです。
建物の耐震性を計算する上で、大きく影響するのは次の4つの要素である。
1つ目は、「建物の重さ」です。建物自体や屋根が軽ければ軽いほど、建物が受ける地震の揺れの振幅は小さくなります。
2つ目は「耐力壁」になります。耐力壁が多い建物ほど耐震性が高くなります。
地震力の作用で建物の一部または全体が倒壊しそうになった場合、各階の柱や耐力壁、ブレースをどのように配置するかで、水平方向の耐力(保有水平耐力)が決まります。
3つ目の重要な要素は、「耐力壁や耐震金物の配置」です。せっかく耐力壁や耐震金物を使っても、その効果を発揮できる場所にバランスよく配置しなければ、効果を期待することはできません。例えば建物の角に耐力壁を配置したり、上下階の耐力壁を揃えたりすることが必要です。
4つ目は、「床の耐震性能」を向上させることで、建物の耐震性を高めることです。
耐震等級は、1.2.3の3つに区分されているのですが。ここでは、耐震等級区分ごとの耐震性能を確認します。実は性能表示制度による耐震性能の算出方法は、建築基準法によるものと若干異なります。ここでは概要を説明しますので、詳細は省略します。
耐震等級1
「耐震等級1」とは、建築基準法で定められた、最低限の耐震性能を満たしており、数百年に一度、震度6強や7に相当する大地震に耐えられる強度があると計算されたものです。
震度等級1は、数十年に一度の地震(震度5程度)による建物の損傷を防ぐ効果があるとされています。実際には地震の内容性質によって震度は異なるため、あくまで目安として考える必要があります。
現行の建築基準法では、新耐震基準に基づいています。耐震等級1は新耐震基準と同じレベルです。しかし、新耐震基準、すなわち耐震等級1で建てられていても、実際には震度7クラスの地震で倒壊・損壊した建物が多数発生していることに関しては注意が必要です。
つまり、倒壊しないと言いながら、実際には倒壊してしまっているのです。今後発生が予想される大地震の際には、耐震等級1の建物は頼りにならないと言えます。
耐震等級2
「耐震等級2」とは、耐震等級1の1.25倍の耐震強度があることを示します。「長期優良住宅」の認定を受けるには、耐震等級2以上であることが必要です。また、災害時に避難所となる学校、病院、警察署などの公共施設は、耐震等級2以上が必要とされています。
耐震等級3
「耐震等級3」は、耐震等級1の1.5倍の耐震強度を持つことを示します。住宅性能表示制度で定められた耐震性能の最高レベルです。
震度7の地震力を受けても損傷が少なく、地震後も住宅として利用できます。災害時の救援・復旧活動の拠点となる消防署や警察署などは、耐震等級3で建てられることが多いのです。
建物を購入・建設、そしてリフォーム(リノベーション)際には、耐震等級について一定の理解をすることで、より安全・安心な選択ができるようになります。ここでは、一般的にあまり知られていない耐震等級に関するポイントをご紹介します。
〇耐震等級が不明な建物もあります。
建物の強さを表す指標である耐震等級(住宅性能表示制度)は、2000年に制定されたものです。そのため、2000年以前に建てられた建物については、耐震等級に関する評価書が存在しない場合があります。また、住宅性能表示制度自体が任意であるため、必ずしも評定証明書の取得が必要とはされていません。そのため、耐震等級が明確でないケースの方が多いのが現実です。
そのような場合、築年数などから住宅の耐震性を調査することになります。新耐震基準が制定された1981年6月1日以降に建てられた建物は、新基準をクリアしているため、耐震等級1以上とみなされる。(現行法は満たしていません)
現在、この基準は住宅ローン減税に利用されており、住宅ローン減税を利用するためには、耐震等級1以上(新耐震基準)を満たしていることが必要です。
〇建築時に耐震等級を選択することができます。
耐震等級は、もともと住宅を建てる際に、その住宅の耐震性能を施主にわかりやすく示すために設けられたものです。また、耐震強度に関する施主の希望を伝えるために使われるとも言えます。住宅を建てる際、ハウスメーカーや工務店が定める耐震性能の基準に関わらず、施主が耐震性能を判断できるようにする必要があります。必ず耐震等級3を取得するもしくは構造計算を行う必要があります。
耐震等級の知識があれば、住宅購入時に安全性や住みやすさを考慮した上で耐震等級を判断することができます。耐震等級の知識があれば、ある程度のお金をかけて耐震等級を上げるか、耐震等級ではなく住みやすさを重視するか、地盤の強さで耐震等級を決めるか、など様々な選択ができるようになります リフォームの場合、上部構造評点1.5以上が耐震等級3相当となります。
耐震等級によって地震保険の保険料が割り引かれることもあるので、これらを考慮した上で、施主としての要望をハウスメーカーや工務店に伝えましょう。ただし、性能表示制度や長期優良住宅制度の評価項目のひとつに「耐震等級」があり、また、これらの制度は、基本的には新築住宅を対象に発行される書類です。これらの書類がないと割引が受けられない場合があります。中古住宅の場合は、リフォームの場合にも既存住宅性能評価書となります。
耐震等級3が必要かどうか熊本地震を例にとって考えてみましょう。
まず、知って頂きたいことは建築基準法は、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた法律だという事です。
なぜ、最低基準なのか、それは、性能が良い住宅は高くなってしまうからです。高くなってしまうのはしょうがないですが、安い家で、地震が起こったら家が壊れたってしょうがないし、冬寒くて、夏暑い家でも安い家の方が良いと考えられる方もおられます。但し、生命や健康財産に極端に影響を与える家をつくられてしまったら、日本としてもデメリットしかないので、最低基準は定められています。建物の安全性で言えばそれが耐震となります。建築基準法をクリアするということはすなわち耐震等級1の住宅ということになります。現行基準(2000年基準)となりますので、まず、それ以前の建物に関してはそれ以下の可能性が非常に高くなってしまいます。
つまり、数百年に一度、震度6強や7に相当する大地震に耐えられる強度あえあれば生命は守られますよという程度でしかありません。というラインが耐震等級1なのです。また、熊本地震では耐震等級1では生命の危険(倒壊)があるということです。
熊本地震が想定外であったのは、地震自体がかつて経験したことの無い揺れであったことが分かっており、震度7の揺れが2回発生したことも大きな原因の一つとされています。一回目の前震では耐えたものの二回目の本震で倒壊した建物も多かったからです。2000年基準では、単発の大きな地震には耐えられる設計でも、繰り返し大きく揺れることは想定されていなかったということが今回の熊本地震で露呈してしまったのです。
事実として、国の熊本地震の調査報告によれば、熊本地震では旧耐震の建物は約46%の建物が倒壊・全壊しており、新耐震基準でも約18%の建物が倒壊・全壊しています。ですが、耐震等級3の住宅に限ると倒壊・全壊してしまった家はありません。このことから大規模地震が2回起こったとしても耐震等級3は安全だという事が分かります。また最高等級が3というだけで、それ以上の耐震性が必要となることが分かります。
また、地震保険があるから大丈夫?などお考えではないでしょうか。
地震保険は規模によって保険金が決まります。東京都全体を襲うような大地震が起こった場合保険金が契約した金額でおりてくるとは限りません。また、2020年のコロナかのように集団感染が流行したタイミングと重なると避難所も危険になります。その為、避難所となる建物は耐震等級3程度の耐震性を有した建物になりますが、耐震等級3にすることで、自分の家に住みながら避難できるというわけです。
家を建てる、満足のいく家を選ぶためには、耐震等級についての知識が大切です。日々の暮らしを家族でどう過ごしたいか、どんな未来を描いているか、ご家族でじっくり考えてみてください。大切な家族と過ごす家だからこそ、安全性は重要な判断基準です。
新築住宅の場合、性能評価書が発行されている住宅と、そうでない住宅があります。注文住宅の場合は、耐震等級をしっかり発注することで、より住みやすく安心できる住まいを作ることができます。問題は、中古住宅を購入する場合や、リフォームをする場合に生じます。耐震リフォームの場合、耐震等級ではなく、数値が点数化されます。耐震等級3まで上げるには、1.5まで上げなければなりません。
2000年以前は、検査済証の交付を受けていない戸建て住宅の約7割が耐震強度不明とされていました。
そして、話が少し脱線しますが、建築業者が建築時に行う特例措置の抜け道があります。
それは建築基準法には「4号特例」というものがあり、小規模な建物(一般住宅)であれば、実際の構造計算をしなくても建てられるようになっています。
つまり、耐震等級を取得しなければ構造計算もないので耐震基準は実はあって無いようなものなのです。
住宅を購入する方や建てる方は、構造計算をして耐震等級3相当にするか耐震等級3を取得する必要があり、リフォームする方も、構造計算を実施しなければならないと考えましょう。
リフォームに関しては、古い建物に対しては、国が建物の耐震化を促進するために様々な対策をとっているのは事実です。
しかし、現在、住宅分野で「耐震化」と呼ばれているもののほとんどは、旧耐震住宅の耐震レベルを現行の建築基準法のレベル(耐震等級1相当)に引き上げるだけのものです。
耐震リフォームの場合、耐震等級ではなく評点という形で数値が算出されますが、耐震等級1の性能はリフォームでは評点1.0に相当します。耐震等級3に上げるためには、評点1.5まで上げる必要があります。
これらの等級を取得するためには、壁量計算や許容応力度計算などの構造計算が必要であり、特例はありません。
既存建物の正確な診断が必要です。
耐震等級は原則として新築住宅が対象ですが、既存住宅については既存住宅性能表示制度があり、耐震等級を書面で判断することができます。
省エネ基準が義務化されました。耐震等級3もいつか義務化されるのでしょうか。
本当の意味での耐震等級を理解して新築住宅でも中古住宅でも正しい判断を行いましょう。
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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