2023.10.23
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特定の居住用財産の買換え特例について詳しく解説

特定の居住用財産の買換え特例

 

 

 

はじめに

 前回、前々回と『3000万円の特別控除』、『所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例』について解説してまいりましたが、今回は特定の居住用財産の買換え特例について解説していきたいと思います。3000万円の特別控除、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例と比較してどちらの特例を利用した方が良いのかはケースバイケースになります。どの制度を選ぶのがご自身のとって良いのかを選択するための一助にして頂ければと思います。

 

 

特定の居住用財産の買換え特例を受けるための要件

この特例の適用が受けられるのは、令和5年12月31日までの間に居住用の住宅やその敷地を売った場合で、譲渡資産(売った居住用の住宅やその敷地)
および買換資産(購入した居住用の住宅やその敷地)が、次の要件に該当する場合です。 

 

要件の内容

譲渡資産と買換資産それぞれの要件の内容について解説します。

 

譲渡資産

次に掲げる居住用財産で、その譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えているもので、譲渡に係る対価が1億円以下のもの
①現に自らが住んでいる住宅で、居住期間が10年以上であるもの
②以前に自分が住んでいた①の住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡されるもの
③ ①や②の住宅およびその敷地
④災害によって①の住宅が滅失した場合において、その住宅を引き続き所有していたとしたならば、その年の1月1日における所有期間が10年を超えるその住宅の敷地(その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限ります。)

※譲渡年とその前年、前々年、もしくは翌年、翌々年に譲渡資産と一体として居住の用に供されていた家屋とその敷地を譲渡(贈与を含み、収用交換等を除きます。)した場合には、それらとの合計額が1億円を超えるときは適用できませんのでご注意下さい。

 

買換資産

① 買換資産は、譲渡資産を譲渡した年かその前年中に取得したもの又は譲渡した年の翌年1月1日から12月31日までに取得する見込であること
②買換資産を次に掲げる日までに、その者の居住用として使用すること
(イ) 譲渡した年又はその前年取得→譲渡した年の翌年12月31日まで

(ロ) 譲渡した年の翌年取得→譲渡した年の翌々年12月31日まで
(注)上記(イ)や(ロ)に掲げる日までに居住の用に使用できなかった場合、原則として特例適用は認められません。ただし、災害により滅失した場合など特別の事情がある場合は認められます。
③ 取得する住宅は、床面積が50m以上であること
④買換資産が中古の耐火建築物である場合には、その中古耐火建築物が新築後25年以内であるか、または新耐震基準に適合することが証明されたものであるかもしくは、既存住宅売買瑕疵担保費任保険に加入していること(その家屋の取得の前2年以内に契約の締結したものに限る)
 買換資産が非耐火既存住宅の場合には、新築後25年以内であるか又は、地震に対する安全基準を満たすものであること(取得期限までに改修等を行って耐震基準に適合すれば適用できます。)
⑤ 取得する敷地は、その面積が500m以下であること
⑥ 令和4年1月1日以後に行う譲渡資産の譲渡に係る買換資産については、買換資産が合和6年1月1日以後に建築確認を受ける住宅(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く。)又は建築確認を受けない住宅で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のものである場合にはその住宅が一定の省エネ基準を満たすものであること

 

税の計算方法

 居住用財産の買換えというのは、今まで住んでいた住宅やその敷地を売って(譲渡資産といいます)、新たに居住用の住宅やその敷地を買う(買換資産といいます)ことですが、この特例の中味というのは、取得価格の引継ぎによる課税の繰延べといわれるものです。
具体的には次のようになります。
① 譲渡した資産の譲渡価額が買換えた資産の取得価額を下回る(譲渡資産の売却代金≦
買換資産の購入代金等)場合には、その譲渡がなかったものとして税金はかかりません。
② 譲渡した資産の譲渡価額が買換えた資産の取得価額を上回る(譲渡資産の売却代金>買換資産の購入代金等)場合には、売却代金のうち、購入代金に充てた部分については譲渡がなかったものとして税金はかかりませんが、購入代金を上回る部分(売却代金が残った部分)についてだけは譲渡があったものとして課税されます。
そして、その売却代金が残ったことにより、課税されることとなる場合の課税長期譲渡所得金額は、次の算式により計算されます。

 

①譲渡収入金額

譲渡資産の売却代金ー買換資産の購入代金等

②取得費・譲渡費用

(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(①/譲渡資産の売却代金)

③譲渡資産の売却代金

①譲渡収入金額ー②取得費・譲渡費用=③譲渡資産の売却代金

となります。

計算例(3000万円特別控除と軽減税率の特例を受ける場合との比較)

(事例)
① 譲渡資産について
所有期間20年の居住用家屋とその敷地
居住期間 15年  譲渡対価 8,000万円
取得費1,200万円(家屋については減価の額200万円を控除します。)
譲渡費用 300万円
② 買換資産について
一戸建て新築住宅(敷地の面積120m、家屋の総床面積100m)
取得価額 6,000万円
取得後、直ちに自ら住みます。

 

買換えの特例を受ける場合と3000万円特別控除と軽減税率の特例を受ける場合との比較こちらです。

買換えの特例を受ける場合

①収入金額
8,000万円-6,000万円=2,000万円
②取得費・譲渡費用
(1,000万円+300万円)×( 2,000万円/8,000万円)
=325万円
③譲渡所得の金額
2,000万円-325万円=1,675万円

 

1,675万円が課税長期譲渡所得金額

 

税額はおおよそ340,28万円

1,650万円✕20.315%≒340,28万円

 

3,000万円特別控除と軽減税率の特例を受ける場合

①収入金額
8,000万円
②取得費・譲渡費用
1,000万円+300万円
=1,300万円
③譲渡所得の金額
8,000万円-1,300万円=6,700万円
6,700万円-3,000万円=3,700万円

 

税額はおおよそ525,77万円

3,700万円✕14.21%≒525,77万円

となります。

特定の居住用財産の買換え特例の適用判断にあたっての注意点 

1 居住期間は通算年数で判定
特定居住用財産の買換え特例には居住期間が10年という要件がありますが、それはその居住用財産の所在する場所に10年ということであり、引き続き居住している必要はなく、転勤等により一時的にその場所以外に居住している期間がある場合には、通算して10年以上であればかまいません。また、その10年という期間は譲渡した日までの居住期間をいい、所有期間の計算とは考え方が違いますので、ご注意ください。

2 土地と建物の所有者が異なる場合でも可能
特定居住用財産の買換え特例は、基本的に建物の所有者に適用されます。しかし土地と建物の所有者が異なった場合でも、要件の全てを満たしたときは特定居住用財産の買換え特例の適用を受けることができます。敷地の所有者と建物所有者が、譲渡時から居住の用に供すべき期間(取得年の翌年末)まで生計を一にする親族関係があるという条件とともに、売った資産・買った資産に次のような条件が付いています。

売ったマイホーム(譲渡資産)
①敷地所有者の所有期間10年超

②敷地所有者の居住期間10年以上

③敷地と建物の同時譲渡

④敷地所有者と建物所有者が譲渡時に同居

買ったマイホーム(買換資産)
①居住用の建物・敷地を取得すること

②買換え資産は譲渡資産の収入割合に応じて取得

③買換え資産の取得期限内までに取得

④譲渡した敷地所有者・建物所有者ともに買換え資産に居住する

適用を受けるための手続き方法

この特例を受けるためには、確定申告を行う必要があります。手続きの際に必要な書類をまとめています。正しくは専門家または税務署と確認をお願いします。
確定申告書に添付する書類
・譲渡所得計算明細書
・譲渡に係る売買契約書の写しその他の書類で、譲渡に係る対価の額が1億円以下であることを証明するもの
・譲渡した不動産の登記事項証明書(または登記簿謄本・抄本)
・住民票の写し(譲渡日から2ヶ月経過後に譲渡した資産のある市区町村から交付されたもの)
・買換資産を取得予定の場合は、買換資産の明細書
《確定申告時にすでに買換資産を取得済の場合は、上記に加えて次の書類を準備》
・買換資産の購入金額が明らかになる書類(契約書、領収書のコピーなど)
・買換不動産の登記事項証明書(または登記簿謄本・抄本)
・住民票の写し(買換資産の所在地のもの)
・買換資産が耐火建築物の中古住宅である場合で、取得日から25年以内に建築されたものでないときは、耐震基準適合証明書、住宅性能評価書の写しまたは既存住宅売買瑕疵担保責任保険付保証明書が必要です。
ケースによっては上記以外にも税務署からの指摘により追加の書類が必要になる場合もあります。まずは管轄の税務署に相談し確定申告の準備をしましょう。

 

まとめ

 前回の3000万円の特別控除所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例に続き特定の居住用財産の買換え特例について利用できる要件から、税金の計算方法まで解説しています。今回解説した、居住用財産の買換え特例は3000万円の特別控除内で収まるのであれば、3000万円の特別控除を利用した方が良いと思います。譲渡収入が3000万円を超える場合に買換えの特例を検討する必要がでてまいります。この買換えの特例は課税の繰延べであり、将来もし、買い換えた資産を譲渡した場合には、繰り延べされた所得についても課税の対象になりますので、注意する必要があります。心配な方は税理士や税務署などの専門家に相談しましょう。

 

 

 


著者情報

宅地建物取引士 刈田 知彰

      (かりた ともあき)

ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。

私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。

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