2023.06.05
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空き家問題とリノベーションについて
更新日:2024年3月13日
このコラムでは空き家対策×リノベーションについて解説していきたいと思います。空家問題とは何か、リノベーションとは何か、どのようなリノベーションをすれば良いのか。相続で不動産を受け継いだ人は、その運用の仕方に戸惑ってしまうことも多いようです。
今回は、空き家・空室問題の解消に、リノベーションはどのような効果があるのか、リノベーションで得られる付加価値について考えたいと思います。
近年、日本では空き家が増え続けています。
上の図をご覧ください日本の空き家率(H30年)は13.6%に上ります。9件から10件に一件は空き家という具合になっております。もちろん住宅ストックの観点から空き家が無い方が良いとも言い切れませんが、管理されていない空き家が多くなると以下の弊害が発生します。
空き家の弊害
空き家は管理する人がいないので、様々な弊害を及ぼすことがあります。どのような弊害があるのかをご紹介します。
・防災性の低下
空き家はそのまま放置していますので、倒壊、崩壊、屋根・外壁の落下や火災発生のおそれが高まります。建物の天敵は水です。雨水が建物の内部に進入すると腐敗腐食の原因になります。また、腐敗腐食が進むと、シロアリを呼び寄せてしまいます。また、ガスや電気のガス漏れ・漏電の可能性も高くなり、火災発生のリスクも高まります。
・防犯の低下
人の出入りのない家は隠れ家などに利用され犯罪の誘発につながります。草木が生えている、郵便物が溜まっているなども空き家を疑われる原因の一つです。また、空き家の廃墟化が進むと、更に目立ってしまいます。可能な限りメンテナンス、防犯対策は心掛けましょう。
・ゴミの不法投棄
空き家の状態が悪くなると、ゴミの不法投棄が増えます。人が見ていないと思うと自分も捨てていいかと思う人は一定数います。現に再建築不可の保有物件にはその敷地内にごみを不法投棄されたことがあります。ごみを捨ててあると、そこにはごみを捨ててもいいんだと思われてしまうので、ゴミが捨てられないように綺麗に保つことが理想です。
また、鳥居マークなどを張っておくと効果があるみたいです。
・衛生状態の悪化、悪臭の発生
空き家は木材の腐敗やゴミの量の増加などや、そこを根城に蚊やハエ、ネズミ、ダニ、野良猫などが発生して、衛生の悪化、悪臭が発生してきます。このような状態になると状況は悪くなる一方です。
・風景、景観の悪化
ここまで解説したような状態で風景や景観が良くなることはないです。近隣住人にも影響がありますので注意しましょう。
・その他
樹枝の越境、雑草の繁茂、落ち葉の悲惨など近隣にも迷惑をかけてしまいます。
以上の空き家発生の問題などが上がります。
空き家の種類
空き家とひとまとめに言いても種類があります。
二次的住宅
別荘など
賃貸用または売却用の住宅
新築中古問わず、賃貸又は売却の為に空き家になっている住宅
その他の住宅
上記の理由以外で人が住んでいない住宅、入院中、老朽化で人が住めない
これらに分けて検討することが必要です。
例えば別荘などは、しっかりと管理してある物件が多くなることは日本で裕福な家庭が増えたとも捉えることが出来ますので、喜ばしいことでもあると思いますが、実際に問題になっているのはその他です。
空き家になっているが管理・メンテナンスがされていない住宅になります。人が住んでいない空き家は、劣化が進みますので、
最悪のパターンはメンテナンスされずにそのまま老朽化が進み廃墟となってしまい資産性をなくしてしまうことです。
空き家の多い件としては山梨県や和歌山県長野県、その他四国の4県などは全国平均よりも空き家率が高い県となります。日本海側ではなく瀬戸内海側の都道府県の空き家率が高くなっています。一般的に空き家率30%以上になると危険ラインと言われています。
行政も補助金を出して空き家対策に取り組んでいますが、空き家が増える要因としては、少子高齢化と人口の減少や、都市への人口集中などがあり、これらは容易に解消できるものではなく、今後もこの傾向は続くとみられています。
実は空き家の過半数が賃貸物件(売却予定物件)で、賃貸マンションや賃貸アパートを経営している不動産経営者にとっても、空室問題は、今後避けては通れない深刻な課題です。そこで、安価で買える築古の不動産を現在の需要に合わせてリノベーションし、貸し出したり売却したりする方法が注目されています。
地方の物件はもちろんのこと都心でも、最新の設備を備えた新築物件の人気は高い反面、築古の賃貸マンションやアパートの空室が増えてきています。不動産投資では、たとえ新築物件に投資してもいずれは建物が経年劣化し、設備やデザインも、時代の需要や流行から外れていきます。 利回りの高い中古物件でも、購入して間も無く空き家が深刻化し、実質利回りを維持していくことができず、結局、経費の持ち出しになることがあります。また、空室が長期化してスラム化した賃貸物件では、売りに出してもなかなか買い手が見つからない問題もあります。
空き家の建物を取り壊して更地にして売却するのにも多額の解体費用が発生します。さらに現状、更地にしたが売却できない場合は、空き家が存在していた時よりも高額な税金を払わなければなりません。(空家等対策の推進に関する特別措置法の改正により、空家とみなされた場合建物があったとしても税金が高くなるようになります。)ただ、今の状態では、どうすることもできないという事が空き家には多いと思います。
一方で、空き家を賃貸物件に定めてニーズに合わせてリノベーションすることで、新しい顧客層を獲得することが可能になります。
投資目的で購入した物件は、最初の入居者の時にしか新築を高値で宣伝することはできません。一度誰かが住めば中古物件となり、5~10年経てば新築や比較的新しいと宣伝できても、20年経てば見る人に「古さ」をそうしても感じさせてしまいます。築浅の物件であれば、ちょっとしたリフォームで集客できますが、築古の物件であれば、大規模なリフォームが必要になってまいります。人気がなくなって空き家状態になっている建物は、立地が良い物件であればリノベーションする価値がある。立地条件の良い物件であれば、リノベーションの価値は高いです。リノベーションを行うことで、物件に新たな価値が生まれ、より高い賃料で借りられるようになります。
リノベーションで空室問題は解決できるのか?
築20年以上の空き家でも、ターゲット層を選定し、リノベーションによって新たな価値を付加し、単身者やファミリー層を取り込むことは可能です。リノベーションとは何か、どんな改修が必要なのかをおさらいしておきましょう。
例えば、女性向けには、独立洗面台、システムキッチン、洗浄機能付き便座、など、女性目線での住空間のリフォームが求められています。
単身者向けには、ガスコンロ、ビルトイン照明器具、家具など、短期間であれば日用品を購入しなくて済む利便性が求められます。
大学近くの学生向け、都心の単身者向け、郊外のファミリー向けなど、物件の立地条件によって、ターゲットを絞ったリノベーションが必要です。
また、1981年6月1日に耐震基準が改正されていますので築年数に合わせた耐震補強工事が必要になります。
築年数別おススメ性能向上リノベーションについて下記コラム参照
https://www.chukokodate.com/column/detail/?p=77
まず、リノベーションとリフォームの違いについて説明します。リフォームだと、簡単に言えば原状回復的な要素の強い修繕工事です。リフォームは、壁紙の張り替えや設備の更新など、比較的短期間の修繕工事で、入居者が入れ替わったときに行われるイメージです。一方、リノベーションは、住空間に新たな価値やデザインを付加する大規模な修繕工事です。例えば、壁を撤去してリビングを広くしたり、間取りを変更してウォークインクローゼットを設けたり、壁・床・天井をすべて張り替えたりすることもあります。リノベーションは、古くなったインテリアを一新して美しくするだけでなく、入居者を惹きつける住空間を提供するために必要なのです。
構造計算や外皮計算を行い耐震補強と断熱補強をすることを性能向上リノベーションと言います。
ただし、スケルトンリフォームと呼ばれる内装や設備を解体するリノベーションは、数ヶ月かかることもあり、その間は賃料収入が見込めません。また、リノベーション後にどの程度の需要が見込めるのか、エリアの利便性や都心へのアクセス、想定されるテナント層などから、リノベーションの規模を見極める必要がある。費用対効果を考慮し、どのような規模でどれだけの費用をかけるかを決めることが重要です。
リノベーションの規模や内容は、建物の築年数に加え、建物の構造によって制限されます。建物の構造は大きく2種類に分類する必要があります。耐震補強できる建物とそうでない建物です。簡単に言ってしまえば木造かそれ以外の構造に分けることができます。木造はリノベーションできるが、それ以外はリフォームになってしまいます。
また木造にも 柱で支える「在来工法」と壁で支える「2×4(ツーバイフォー)工法」があり、建物の構造上、大規模なリノベーションができない場合があります。在来工法では、柱や梁で建物を支えているため、壁を撤去することで自由にレイアウトを変更することができますが、2×4ではそれができません。
また、内装をスケルトンにしてリノベーションする場合、構造部分に耐震性の問題やシロアリ被害などの大きな欠陥が見つかるケースも考えられます。そのため、リノベーションの規模や費用は物件によって大きく異なりますが、目安としては、800万円から3000万円/戸と行う工事や建物の大きさによって大きく異なります。
リノベーションを計画する際には、費用対効果や構造上の問題を考慮しつつ、立地条件やその地域の居住者の属性に合わせた具体的なコンセプトを練ることが必要です。
建物が古くても、水回りの位置や間取りの変更、快適な生活動線の再構築、現在のライフスタイルに合った住空間の創出などにより、新たな需要を生み出すことができます。特に、都心部の駅近物件や郊外の大型商業施設周辺は、単身者やファミリー層にアピールできる強みがあります。逆に郊外の物件は費用対効果が得られない可能性もあります。
リノベーションは、空き家・空室問題の一部の解決方法として有効であり、不動産投資をお考えの方にとって重要な検討事項です。しかし、リノベーションをすれば必ず入居者が増えるというわけではありません。物件エリアの需要や想定される入居者層に合わせて、リノベーションを行う必要があります。
現在、空き家でお困りの方は、性能向上リノベーションで新たな価値を付加し、魅力的な住空間をアピールし、収益アップに努めましょう。
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著者情報
宅地建物取引士 刈田 知彰
(かりた ともあき)
ハイウィルでは主に不動産の仲介をさせて頂いております。刈田です。
私が不動産業界に飛び込んでから早16年が過ぎました。最初に入社した会社は新築マンション・新築戸建ての企画・開発・販売までを行う会社でした。そこで新築マンションや新築戸建てのノウハウを学び営業してきました。当時の私は何の考えもなしに、中古は「保証もないし」「リスクが高い」と中古のデメリットのみを説明する営業ばかりをしてきました。あるとき自分の間違えを受け入れ、これからの日本は新築が脚光を浴びるのではなく中古流通×性能向上リノベーションが日本の住宅市場のスタンダードになっていくと確信し、現在は中古流通×性能向上リノベーションをメインに物件のご紹介をさせて頂くようになりました。
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